小児がんと闘う大阪府の中学3年、小谷侑生(ゆうき)さん(15)が始球式のマウンドに立った。現在は東京と大阪を行き来し、治療を続けている。

ヤクルトとNPO法人キャンサーネットジャパンは「世界小児がん啓発月間」の9月に合わせ、患者とその家族を試合に招待する「ゴールドリボンナイター」を開催。小谷さんは大観衆の神宮でそのマウンドに上がった。

5歳から野球を始めたが幼稚園の頃、小児がんが見つかった。それでも治療と野球を両立してきた。初めての神宮のマウンドから投じた球は見事に低めのストライク。大歓声が小谷さんを包んだ。

「神宮球場に初めて来て最初は不安だったんですけど声援が後押ししてくれて、やってやるぞという気持ちになった。良いボールが投げられたと思います。ありがとうございます」と笑顔を見せた。

大阪が地元ということもあり好きなチームはオリックス。「ホームランバッターが好き」とT-岡田外野手(35)とヤクルト村上宗隆内野手(23)の共通点である背番号55のユニホームを選び始球式に臨んだ。

その村上は、小児がん啓発をPRする「ゴールドリストバンド」を着け、初回に25号2ランを右翼席へ運んだ。小谷さんは村上を見た感想を「とてもうれしかったです。初めて生で見たので」と笑った。

治療と野球の両立では「やっぱり期間が空いたりすると筋肉が落ちるので、戻すのがとても大変でした」と振り返る。

それでも野球が大好きで、入院中にプレーできない時でも「自分にとって生活の一部。やっぱり野球を見ないと楽しみがなかったので(始球式ができて)とてもうれしかったです。これからも野球を好きでいたいと思います」と語った。将来の夢についても「ずっと野球に関わる仕事がしたいと思っています」と話した。

小谷さんは始球式のマウンドを通じ伝えたいことがある。

「病気になっても諦めずに頑張っていれば必ず楽しいことがあるので頑張って生きてみてください。これを通じていろいろな人が病気のことに関心を持ってくれたら良いと思います」

「100点満点」と話した神宮の投球が、病気の啓発へ大きな力となった。