阪神近本光司外野手(28)の勝負強さが、ビッグイニングを呼び込んだ。

2点を追う3回2死二塁。左腕ピーターズに2ボール2ストライクと追い込まれながら、外寄りに甘く曲がったスライダーを丁寧にミートした。ライナーで右前に運び、1点差に迫る適時打をマーク。打線はリードオフマンの一打からつながりが増し、この回一挙6得点で流れを一変させた。

「なんとか1点っていう場面だった。その後の結果はその後の人たちが頑張ってくれた結果。僕は僕のやることをしっかりやりました」。当の本人は冷静に振り返ったが、選手会長の一打が空気を変えたのは間違いない。まだ残り24試合あるが、早くも5年目でキャリアハイとなる51打点目だ。下位打線から好機をつくり、上位打線でかえす。新生岡田阪神の象徴となっており、指揮官も「ずうっとあの感じで点を取ってきたわけやからな」と納得顔だ。

リーグトップを走る得点圏打率も4割2厘までアップした。「下位からつくったチャンスをしっかり1点ずつ取ることが、僕は結構大事かなと思っているんで」。1打席1打席を大切にした結果の数字は、もはやイメージ通りなのかもしれない。チームはヤクルト打線の追い上げを振り切り、優勝マジックをまた1つ減らした。「どんな9月になるのか楽しみなんで」と表現した背番号5。今や、その存在なくして虎は語れない。【佐井陽介】

▼阪神近本が3回に適時打を放ち、今季通算51打点とし、シーズン自己最多を更新した。近本は今季出場108試合中、107試合で1番打者を務めている。他球団で今季1番で100試合以上先発した選手は他におらず、次に多いのは広島菊地の92試合。近本の安定感が光っている。近本は1番での打点も50を記録(2番で1打点)。阪神の1番打者でシーズン50打点以上をマークしたのは85年の真弓明信84打点を筆頭に5人、9度目になる。