劇的勝利で北東北の頂点に返り咲いた。八戸学院大(青森)が富士大(岩手)に8-5で逆転勝ちし、8季ぶり16度目の優勝に輝いた。1点を追う9回2死満塁、十鳥真乙(とっとり・まおと)内野手(2年=東京実)が逆転の右越え満塁本塁打で歓喜をもたらした。前日16日はタイブレークの末に競り勝ち、両大が7勝2敗で並んでいた。勝った方が優勝の大一番で、勝負強さを発揮した。

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勝ちたい気持ちを乗せた打球が、夜空に描かれた。2点を追う9回2死満塁から四球で1点差とし、十鳥は「(打席を)回してくれて大チャンスだったので、絶対に自分が決めるだけ」と闘志を燃やした。カウント1-2から内角高め直球を引っ張ると、打球は右翼方向に高々と上がった。「行ってくれ!」。照明が照らされたグラウンドからフェンスを越えたのを確認し、笑顔でダイヤモンドを1周した。

「今まで支えてくれたみんな、4年生の気持ちを背負って、自分が絶対に決める気持ちでやっていたのでとてもうれしかった」

同裏は2死から連打で一、二塁と粘られたものの、最後は右飛で試合終了。「全員で勝ち取った勝利」を応援席の部員らと分かち合った。

7日は正村公弘監督の誕生日で、60歳の還暦を迎えた。以降は青森大、富士大相手に4戦全勝。ナインが“逆転優勝”をプレゼントした。6度、宙に舞った指揮官は「(胴上げは)30年ぶりぐらい。(以前は)社会人の時にコーチをやっていて、都市対抗が決まった時にしてもらった。今まで優勝しても胴上げはしなかったけど、還暦だということで」と目を細めた。

今後は明治神宮野球大会(11月15日開幕、神宮)出場を懸けて、仙台6大学と南東北の優勝校、北東北2位の富士大で争う東北地区大学野球代表決定戦(10月21日開幕、青森)に挑む。殊勲の十鳥は「優勝したが、ここで終わりじゃない。絶対、王座で勝って神宮で優勝したい」。8季ぶり優勝を果たした強豪の秋が、第2章に突入する。【相沢孔志】