“親子の会話”から巨人の星への道のりが始まった。巨人ドラフト1位の西舘勇陽投手(21=中大)が4日、故郷の岩手・一戸町で自主トレを行った。キャッチボールでは父・満弥さん(51)を相手に力強い球を投げ込んだ。13日から川崎市のジャイアンツ球場で新人合同自主トレが始まる。父が構えるミットから響くエールを胸に、プロ野球の世界に飛び込む。

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白銀の世界が広がる。盛岡から約60キロ北上した山あいの町で西舘が親子キャッチボールを披露した。気温は2度。室内練習場でも真っ白な息が舞う。徐々に距離が伸びて20メートルを超えた。糸を引くような投球で黒いキャッチャーミットをたたいた。甲高い捕球音と同時に、父は顔をゆがめた。「もう少し遠慮して投げればいいと思うんですけど。一応自分のためにも練習を付き合ってくれてるので、そこはちょっと、痛みに我慢していただいたって感じで」と照れくさそうに親子の時間を振り返った。

頬を赤らめて感謝を伝えた。小学3年で野球を始めてからずっと、ミットを構え続けてくれた。一戸町役場で勤務する父は「雪が積もってなければ役場の駐車場でやったりしましたね」と時には職場の片隅が練習場になった。雪が積もれば、車で坂道を上り、室内練習場まで送り届けてくれた。この日も前日3日に降った雪が残り、助手席に腰かけた。父への思いを聞かれ「感謝したいと思います」とはにかんだ。

踏み出す一歩に不安と期待が積もる。高校、大学で経験した入寮とはひと味違う。球団創設90周年を迎える巨人軍の一員となることに「すごい環境でできるというところは楽しみな部分ではある。逆にすごい環境があるから、自分もやっていけるのかというところはある」と心境を明かした。1軍での起用法について阿部監督は、敗戦処理からのスタートを明言している。将来的には先発希望も「1年目は(登板する)ポジションはどこでもいいと思っている。1軍に帯同するのが目標なので、どんな場面でも使ってもらえたら」と任された場面でアウトを積み重ねるつもりだ。

ふるさとでずっと鳴らしてきた父の捕球音は自分へのエール。一歩ずつ、地道にエースへの道を踏みしめる。【黒須亮】

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