西武の広池浩司副本部長兼編成統括(50)がスタンドでつぶやいた。

「マウンドがちょっと気になったかな…?」

試合後、慶大先発の広池浩成投手(新2年=慶応)にその言葉を代わりに伝えると「あっ、そう言ってましたか?」と目を丸くした。「まぁ、でもそれはあまり言わないようにします」と表情を引き締めた。

2人は親子だ。広島の投手だった父に憧れている。「すごく尊敬できる人です。野球はもちろんですけど、人としても尊敬しています。こういう人がうまくいくんだろうなと思います」と照れくさそうに言う。

左腕の父とは正反対の、本格派右腕だ。現在の最速は151キロ。「圧倒できるボールを投げたいです。今年、155キロを出したいです」と志は高い。

ドラフト候補が集まったこの試合、父も仕事として視察に来た。マウンドから目に入る。「いや、まぁ、いるなっていうのは普通に。ちっちゃい頃から見られているので慣れてます」。ただこの日は初回、いきなりの4連打で3失点。「課題が出たかなと思います」と反省も忘れない。

もうすぐ大学2年生。いずれは父と同じ世界に行きたい。

「去年よりかなり成長できているかなとは自分では思っています。まずは6大学リーグで圧倒的な投球をしてみたいです」

試合後、そんな思いを口にしている間に、仕事を終えた父はとうに枕崎を出発していた。【金子真仁】