「1番、レフト、逢沢君~」

法大グラウンドに、先行の亜大の打順を読み上げる法大・上中咲葵マネジャー(3年=西武文理)の優しい声が響き渡った。今秋のドラフト候補に挙がる最速157キロ右腕・篠木健太郎投手(3年=木更津総合)の、キャンプ終了後、初の実戦マウンドとあって、スタンドにはスカウトをはじめ、多くの観客が詰めかけた。

上中さんにとっても、今年初のアナウンスだった。「元ロッテの名物アナウンス谷保恵美さんの柔らかく、芯のある声を参考にしている」という、優しい声で試合が進む。「お客さんも入っていたので、選手の名前を覚えてもらえるように心がけました。よかったと思います」。今年初仕事を終え、安心した表情を見せた。

昨年の明治神宮大会以来、約3カ月ぶりとなる実戦前夜は、元西武外野手の父・吉成さん(現・若獅子寮の副寮長)が「喉を温めるように」と、鶏白湯スープの温かい鍋料理を振る舞ってくれた。「父のおかげで声もよく出ました」と、感謝した。

上中さんも、選手同様、オープン戦でのアナウンスを重ね、リーグ戦本番に備える。「直接、勝利に貢献することはできませんが、ミスなく円滑に試合が進むように頑張りたいと思います」。柔らかな笑顔が、春の日差しに弾けた。