<中日4-0広島>◇30日◇ナゴヤドーム

 1点もやるつもりはなかった。5回2死一、三塁のピンチ。中日先発小笠原は、こん身の122キロシンカーで4番栗原を右飛に仕留めた。ふうっと息を吐きながら、グラブと左手をポンポンと3度あわせた。5回82球で4安打2四球無失点。「与えられたチャンスで今持っている自分の力を出して思い切って投げることだけ考えた」。今季初勝利を、そう振り返った。

 崩れそうになっても、踏ん張った。2回1死一、二塁では倉を二飛、山崎をこん身の外角直球で見逃し三振。3回には安打と2四球で2死満塁と追い込まれたが、当たっている5番シーボルを二飛に打ち取った。昨年先発に定着したが、それまでは1、2軍を行ったり来たりの生活。2度と戻るつもりはない。けっして本調子ではなかったが、ボールに気持ちを込めた。

 初登板に向け、準備をしてきた。昨年自己最多6勝を挙げたが、満足しなかった。「春からやらなきゃならない。10勝しないと」。自らを追い込み、年明けから勢力的に動いた。例年通りに明大の先輩・川上とともにサイパンで自主トレを行ったが、今年は一念発起して先乗り。キャンプでは開幕ローテ当確組として、細心の調整を続けてきた。

 結果を出しても、気が緩むことはない。「初回はそうでもなかったけど、ランナーを出してバタバタしちゃいましたね。次はもっと投げさせてもらえるようにがんばりたい」。投手王国中日の貴重な左腕として、今年は1年間フル稼働する。【村野

 森】