<ソフトバンク3-2中日>◇12日◇福岡ヤフードーム

 笛吹けど踊らず…。中日打線がソフトバンク大隣に5安打2得点に抑えられ、連敗した。1-3の5回攻撃前、落合監督が円陣で異例のゲキを飛ばしたが、反撃は8回の藤井の1号ソロによる1点のみ。今季初先発マスクの小川が2安打する収穫はあったが、あらためて貧打線ぶりが際立った。セ・リーグ上位3チームが敗れ、1位阪神との8・5ゲーム差、3位巨人との2・5ゲーム差が変わらないことが救いだった。

 最後は3つのアウトをすべて三振でとられた。井端、ウッズ、中村紀。オレ竜が誇る打者のバットが空を切って試合は終わった。2年目・23歳の左腕大隣に5安打完投を許した。「勝てない?

 勝てないというのは60試合やって1勝もしていないことだ。まだ貯金があるだろう。まあ地底にもぐっているな。奥深くまで。貯金がゼロになったら目が覚めるかな」。落合監督は帰りのバスへと歩いた。オレ流節は負けた時ほど冷静に、強気に響く。この夜もそうだった。

 打線は重症だ。初回、荒木のヒットを口火に1死一、三塁から和田の左犠飛で先制した。だが、一塁を飛び出していたウッズの帰塁が間に合わずに3アウト目をとられた。ここから沈黙が始まった。球速以上に伸びる大隣の高めのストレートに各打者がポップフライを打ち上げた。

 1-3で迎えた5回、いつも冷静に戦況を見つめる落合監督が珍しく動いた。三塁ベンチ内で選手を集め、語気を強めてゲキを飛ばした。「思い切ってやれ!」。異例の指揮官による円陣招集だったが、笛吹けど踊らず。結局、8回に藤井の1号ソロで1点差に迫るのが精いっぱいだった。

 「オレが言って、頭を持ち上げるならナンボでも言ってやるよ。オレがグラウンドに出るわけではないし、やるのは選手。そのうち頭を持ち上げるだろう」。

 地底深くもぐった竜が頭を持ち上げるのはいつになるのか。ゲキを飛ばしたくらいで目覚めると思うほど落合監督は楽観的ではない。ただ、そうせざるを得ないほどチーム状況は深刻だ。【鈴木忠平】