野球体育博物館は13日、今年の野球殿堂入りを発表し、4人が選出された。競技者表彰のプレーヤー部門には、元ヤクルト監督若松勉氏(61)を選出。殿堂入りは計168人となった。表彰式は7月24日のオールスターゲーム第1戦(札幌ドーム)で行われる。

 北海道・留萌出身の「小さな大打者」に、大きな勲章が加わった。「聞いたときは頭が真っ白になった」と喜び、北海道出身者として初の殿堂入りを果たした若松氏は、39年前を思い出していた。ドラフト3位指名に「自信がない。プロになりたいと思ったことはなかった」と拒否し続けた。

 身長は公称168センチだが、実際は166センチ。しかし札幌まで出向いた当時のヘッド兼打撃コーチだった中西太氏の「体が小さくても下半身を鍛えれば大丈夫」のひと言で、決意。すでに結婚していたが「女房には3年間だけ辛抱してくれって言ったよ。ダメだったら戻って焼き鳥屋でもやるつもりだったけどね」と、フフッと笑った。

 通算打率3割1分9厘は、4000打数以上の日本人選手では歴代1位を誇る。通算2173安打、2度の首位打者、2戦連続の代打サヨナラ弾は豊田泰光氏と2人のみ。たぐいまれなバットコントロールは、強靱(きょうじん)な下半身のたまもの。中学までは競技スキー部も兼ね「バッティングには内が大事」と言う内転筋が自然と鍛えられた。入団後の鹿児島キャンプ「中西道場」では、畳の上で素振りを繰り返す。手のひら、足の皮がむけた。「やけどしたようになったけど、負けたくないから休まなかった。最後まで残ったのはオレと内田(順三=現広島打撃コーチ)だけだった」と遠くを見つめた。

 血のにじむ努力で得た「足の裏で地面をつかむ」という独特の感覚に、左手の人さし指でバットを自在に操る卓越したスイング技術が融合。「調子がいいときは体が(ボールの軌道に)入っていけた」と言い、左方向への強い打球は体格のハンディを感じさせなかった。座右の銘は「万球一会(ばんきゅういちえ)」。「どの1球にも思い出がある。1球1球を無駄にしない」というポリシーを貫き、今がある。

 2001年、監督として日本シリーズを制覇。胴上げでは1回転させられ、お立ち台では「ファンの皆さま、おめでとうございます」と叫んだ。この日は自分に「おめでとう」と言っていい。【沢畠功二】

 [2009年1月14日8時40分

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