はやっ!

 もう来日1号!

 阪神の新外国人ケビン・メンチ外野手(31)が15日に行われた練習試合・ヤクルト戦(浦添)に「5番指名打者」でスタメン出場。4回の第2打席でチェンジアップに反応し、左翼へソロアーチを放った。来日初の実戦で変化球への対応力を披露し、真弓監督をうならせた。メジャー通算89発の実績はダテではなかった。

 「武闘派」のイメージを覆す来日初アーチだった。先頭打者で迎えた4回表。カウント1-0から、メンチが技を見せた。ヤクルト橋本のチェンジアップに体勢を崩されながら、踏ん張った。左手だけで白球をすくい上げると、左翼の芝生席まで運んだ。「ラッキーだったぜ。とにかく自分のスイングをすることを考えていた。ファンも楽しんでもらえたと思う」。この日が初の実戦。2打席目で早くも結果を残した。

 来日からのユニークな言動で、強気かつ陽気な印象を周囲に植えつけた。しかし“裏”の顔は違う。初回の初打席で、自身がもつクレバーな一面をのぞかせた。1死満塁の好機で、初球の甘い直球を見逃すなど、あっという間に追い込まれた。実はこれは思惑通り。「久しぶりの打席だったから、ボールを見ようと思った。緊張していたけど、見えていた」。この後は一転。外角への際どいスライダーや高めの直球など3球ファウルで粘った。一塁への邪飛に終わったが、変化球への対応能力の高さを見せた。

 スイッチの切り替えがうまい。2打席で初舞台のお役御免となると、球場の外でファンサービス。色紙にペンを走らせ、少年に折れたバットをプレゼントした。宜野座球場では、ファンが連れたゴールデンレトリバーとたわむれる。米国の自宅で飼っている同種の愛犬トロッターを思い出した。「犬が大好きなんだよ」。同僚の金村暁が双子を育てていると聞くと、今年8月に双子が生まれるとあって質問攻め。「コミュニケーションを取って、チームプレーは成り立つんだ」。剛と柔の表情の使い分けが、打席での集中力を生む。

 キャンプでは豪快な放物線が目立っていたが、パワーだけではメジャー通算89本塁打は打てない。真弓監督は思わずうなった。「タイミングを外されていたけど、左手1本で打った。あれが(ファウルに)切れないから、技術を持っている。メジャーでもああいうタイプの打者だったようだね」。異国での生活同様に、日本野球にもスムーズに順応しそうだ。

 「ベースボールはベースボールさ。投手に違いは感じなかった。打席の土がすぐに掘れるから、自分の立つ位置を見つけるのに苦労したけど(笑い)」。今度こそは本物だ-。虎党を喜ばせる資質をメンチは持っている。【田口真一郎】

 [2009年2月16日11時46分

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