バットと足で存在感みせた-。広島前田智徳外野手(38)が26日、宮崎・天福球場で行われた紅白戦で、2安打2打点1盗塁の活躍をみせた。3回には栗原の二塁打で一塁から激走をみせホームイン。プロ20年目のベテランが必死の走塁ででアピールした。ブラウン監督も「本当に仕上がりがいいね」と絶賛。激戦の外野争いに、背番号1の名前を加えないわけにはいかない。

 スタートを切った瞬間、歓声が背中を追いかけた。前田智は3番指名打者で先発。初回、2死一、三塁の場面で、5番シーボルの初球に一塁走者の前田智がスタート。捕手上村が二塁へ送球すると同時に三塁走者もスタート。まんまと重盗を成功させた。3回には栗原の二塁打で一塁から一気に本塁へ。必死に走り、ホームインすると息を切らしながら笑顔を浮かべた。

 “本業”のバットでも魅せた。初回、1死一塁の場面で中前打。5回1死一、二塁ではカウント2-3からファウルで粘り、青木勇の8球目をとらえた。中堅の赤松が背走するがその上を越えた。完ぺきに打った2点二塁打。3打数2安打2打点1盗塁。ブラウン監督も「どんな球にも対応できる打撃。盗塁のスタートも素晴らしかった。本当にいい状態に仕上がっている」と満足そうだった。

 昨季盗塁ゼロの前田智にスチールのサインが出ることが、ブラウン監督が昨年から掲げる「スピード野球」の進化の表れだ。この日は、同じく昨季盗塁ゼロのシーボルも1盗塁。同監督は「赤松、天谷、梵らスピードを生かせる選手がいる。本拠地も今季から広くなり、よりスピードが生かせる。相手が油断していたら、俊足でなくても(盗塁の)サインを出すよ」と不敵に笑った。

 前田智は今年、11年ぶりに沖縄1軍キャンプに参加した。日南2次キャンプも今日で打ち上げ。体のケアは欠かさなかった。入念すぎるほどのストレッチ。足に負荷をかけてのリハビリ。時には球団トレーナーが1時間半つきっきりで肩と下半身のケアを行った。過去に何度も故障を経験したからこそ、1年を万全で過ごしたい-。球団トレーナーは「例年に比べて走れています。沖縄で追い込めたのがよかったのかもしれない」と説明した。

 前田智は無言のまま球場を後にした。この日が実戦2試合目。初安打も放った。そして走った。定位置を取り戻すために-。あとは守るだけだ。【網

 孝広】

 [2009年2月27日10時24分

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