巨人坂本勇人内野手(20)が、今年限りで川崎市のジャイアンツ寮を退寮し1人暮らしを始めることが23日、分かった。高卒新人は通常5年以上は寮住まいだが、坂本は3年目の今季、不動の1番打者として走攻守で日本一奪回に貢献。チームの主力へ成長するとともに、野球に真摯(しんし)に取り組む姿勢が認められ、松井秀喜(現ヤンキースFA)の3年半をも上回るスピード退寮となった。若き巨人の「顔」が、新たな環境で4年目のシーズンに臨む。

 4年目へ向け坂本が新たな1歩を踏み出す。今オフ中にジャイアンツ寮を退寮。都内で1人暮らしを始める。球団が慎重に検討を重ねた結果、この日までに正式に承諾された。来年1月の新入団選手入寮までに部屋を明け渡し、プロのスタートを切った寮生活に別れを告げる。

 一流選手への系譜を引き継ぐ。通常、高卒選手は5年間は寮生活だが、特例が過去に存在する。86年入団の桑田真澄は2季目終了後に独立。ヤンキースに移籍した松井秀喜も約3年半で退寮した。ゴジラ級の「飛び級退寮」が坂本に認められた背景には、野球に対する取り組みと謙虚な姿勢に加え、生活態度も極めて良好だったことが挙げられる。休養日には後輩を引き連れ、焼き肉屋で会食。面倒見も良く、後輩から慕われている。プロ3年間で人間的にも大きく成長し、1人暮らしにGOサインが出た。

 ステップアップに向けた、新たな道だった。「寮にいれば何でもそろっています。でもいつまでも甘えていては、これから成長できない。来年で4年目になるし、自覚を持って行動しなければいけないと思う」。充実した環境に感謝しているが、2年間1軍出場したことで、1本立ちする時が近づいていることを感じていた。

 寮から東京ドームへは車で約1時間かかる。本拠地に近い場所に住むことで、移動時間の分も練習に充てられる。「試合前は余裕を持って過ごしたいんですよね」と話すように、渋滞などの余分な時間が節約できることで、試合への入り方にもゆとりができる。ナイター後に室内練習場で打ち込んだ場合も、都内在住なら午前0時前の帰宅が可能。体をケアする時間も増える。

 独り立ちへ向けた準備も整えてきた。今季から疲労緩和のため、スパに通い始めた。読書しながらの低温サウナ、水風呂とお湯の交代浴。締めにはマッサージを受け、心身のリフレッシュに努めた。休日には治療院に通うのも習慣。「自分なりに体のことを考えてケアしています」と意識の高さを見せ、新生活も違和感なくスタートできそうだ。

 26日には契約更改交渉が控える。不動の1番遊撃として打率3割をクリア、初のベストナインにも選出された。今季推定年俸3400万円からの大幅アップは確実。20歳の若武者が、巨人の看板選手へ駆け上がっていく。【久保賢吾】

 [2009年11月24日8時28分

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