<楽天6-1オリックス>◇10日◇Kスタ宮城

 楽天が今季本拠地3勝目を挙げた。投げてはエース岩隈久志投手(28)が7回を5安打、1失点に抑える力投。攻めては山崎武司内野手(41)が初回の先制含む二塁打2本、中村紀洋内野手(36)が3安打猛打賞。ベテラン2人でチーム10安打中5安打を放ってチームを引っ張った。仙台にまもなく届く花便りより一足早く楽天桜が満開~。

 岩隈らしい10年1勝だった。ゴロアウト12で奪三振が2。前日8得点の好調オリックス打線を、嶋とのコンビで「テンポよく」あざ笑った。Kスタ宮城のファンを安心させる7回102球。先週の8失点KOとは別人だった。

 ゲームの潮目を的確に読んだ。リーグ2冠王の4番カブレラ。「前に走者を出さないように」ケアした上で、臆(おく)せず、ウイークポイントの高めを徹底的に突いた。3度の対戦全17球中、実に高め11球。内外角いっぱいに直球を制球し、フォークボールの落差を最大限に生かし、単打1本に封じて打線を寸断した。

 わずかの失投が即、本塁打のリスクに直結する高め勝負。勇気と制球力がなければできない料理法だった。比類なきコントロールの源は岩隈自身のルーツにあった。楽天投手陣の中で最も制球力が高いのは岩隈、は定説。だが「左投げでも岩隈」となると、チーム外に知る人は少ない。ファンにサインを求められると道具を右手に持ち、左手で達筆にこなす。元来左利き、は案外知られていない事実だ。

 「バランス、リズム、タイミング」。投球フォームをつかさどる3大要素の中で、岩隈は「バランス」という言葉を常日ごろ口にし、最も重要視している。エースにとってのバランスとは「左右対称」を意味することは、1枚の写真が雄弁に物語っている。フィニッシュまで顔が全く傾かず、地面と平行のまま、両目でミットを見つめている。「多くの投手を撮ってきたが非常に珍しい」はベテランカメラマンの証言だ。

 登板前日に80メートル、当日でも60メートルの遠投を、30分間もかけ行う独特の調整方法。「バランスを入念に確認するのです。この1週間も調整は変えずに。(気持ちの)切り替えだけでしたね」と岩隈。両目でミットをとらえ制球する技術は、天賦の才に地道な努力を重ねて得た産物だった。

 お立ち台でも正面をキッと見つめ、「まだまだ始まったばっかり。じっくりいけばいい。テッペン目指して、みんなで頑張りましょう」と得意の言葉で結んだ。真正面にしっかりと見据えるのは、もちろん頂点だ。【宮下敬至】

 [2010年4月11日12時3分

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