<ヤクルト3-1巨人>◇18日◇松山

 お立ち台に上がったヤクルト村中恭兵投手(22)を見ようと、ベンチには3人の先発投手が並んでいた。自己最多12奪三振の快投を「気持ちよかったです」と振り返ると、石川、館山、由規の3人が、手をたたいて喜んでいた。物静かな男が緊張しながら一生懸命話している姿は、投球内容とのギャップを感じさせ、チームメートの笑いを誘った。

 マウンドでは圧巻だった。キレのいい速球に加え、スライダーとフォークが制球良く決まり、的を絞らせなかった。7回、阿部に安打を許すまで、巨人打線を完ぺきに封じた。08年5月3日の巨人戦(神宮)では、9回1死まで無安打投球を続けたが、高田監督も「あの時と一緒」と思い出すほど。「巨人キラー」になることを期待されてきた中で、今季2試合合計23奪三振という数字で応えて見せた。

 敵将原監督とは共通点がある。村中はこのオフから日本の歴史に興味を持ち始めた。武田信玄などの戦国武将に関する本を読みあさり、生きざまを勉強した。興味は尽きず、禅の本までをも読んでみた。上杉謙信配下の直江兼続を好む原監督とは、川中島の合戦よろしく、何度も相まみえることになりそうだ。

 8回、1死満塁で小笠原とラミレスを迎えた場面でも高田監督は「継投は考えなかった」と、村中と心中する覚悟で続投させた。気力でピンチを切り抜け、9回のマウンドを林昌勇に託した。「ノーヒットよりも完投したかった」。巨人打線をなで切りにした左腕は、この試合でまた少したくましくなったように見えた。【竹内智信】

 [2010年4月19日8時52分

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