<ヤクルト2-1広島>◇25日◇神宮

 広島のエース前田健太投手(23)がまさかの逆転サヨナラ負けを喫した。今季最終戦に先発したエースは、ヤクルト打線を9回1死までノーヒットに抑えたが、藤本に二塁打されて記録が途切れ、最後はサヨナラ打を浴びた。通算192個で2年連続の最多奪三振のタイトルを獲得したが、プロ入り初のサヨナラ負けという痛恨の終幕。シーズン終盤に調子を取り戻したことを来季への糧にする。

 まさかの暗転だった。9回、先頭のホワイトセルを見逃し三振に打ち取り、ノーヒットノーランまであと2人。張り詰めた緊張感の中、続く藤本に投じた2球目は高めに入ったスライダー。打球が左翼線に落ち、快挙が消えた。1死満塁となって畠山の二ゴロが併殺崩れで完封勝利もなくなり、最後は代打福地に三遊間を割られてまさかの逆転サヨナラ負け。前田健はぼうぜんとマウンドに立ち尽くした。

 「(ノーヒットは)意識していました。調子はそんなに良くなかったが、コントロールが良かった。でも、勝つためにやっているので負けたのは悔しい」

 そう無念の胸中を明かした前田健が、サヨナラ負けを喫するのは、プロ入り初めてのこと。ノーヒッターの快挙とのあまりの落差に、野村監督も「本人もその気でやっていた。最終回は(記録達成を)行ってくれ、と願っていたが…言葉のかけようもない」とうなだれた。

 だが、この日4個の三振を追加し、今季通算192個で2年連続の最多奪三振のタイトルを獲得した。広島投手の2年連続奪三振王は、08、09年のルイス(現レンジャーズ)以来の快挙だ。前田健は「自分の中では悪いシーズンなのでその中で獲得できたのは良かった」と試合後、宿舎で行われた会見で少しだけ笑顔を見せた。

 15勝を挙げ、沢村賞など投手の主要タイトルを独占した昨季とは違い、フォームが乱れ、安定感に欠けた。投球内容が安定したのはシーズン最終盤。11日の横浜戦で13個、20日の中日戦で15個の三振を奪い、2年連続のタイトルを確定させ、2桁勝利も挙げて先発投手の“義務”を果たした。

 それだけに「個人的にはまだシーズンが続いてくれた方がいい」とも思う。逆転サヨナラ負けという締めくくりに無念さもある。だが最後は「フォーム、感覚に手応えをつかんだので、来季に生かしたい。悔しい思いばかりじゃイヤだし、来季こそ優勝、CS進出を果たしたい」と前を向いた。悔しさをバネに、エースはさらに飛躍を期した。【高垣誠】