<パCSファイナルステージ:ソフトバンク2-1西武>◇第3戦◇5日◇福岡ヤフードーム

 エースを救って、Vも決めた!

 ソフトバンク長谷川勇也外野手(26)が、劇的すぎる2本の適時打で悲願のCS突破を決めた。1点を追う延長10回2死二塁で起死回生の同点適時二塁打。12回には歓喜のサヨナラ打を放った。左のヒットマンが右の内川に負けないMVP級の活躍でチームを日本シリーズの舞台に導いた。

 チーム一寡黙な男の心が、熱く熱く燃えたぎっていた。1点を追う延長10回裏2死二塁。長谷川は、ベンチの隅で号泣しながら悔しがっていた杉内の姿を目に焼き付けて打席に入った。フルカウントからの6球目。西武涌井が投じたスライダーを、完璧にとらえ右中間を破った。二塁走者の福田がホームイン。直前に127球を痛打され涙を流していた杉内の負けを、相手エースの127球目を打ち返し、消して見せた。

 「勝ちたいという思いより、ベンチの杉内さんの姿を見て絶対に杉内さんを負けさせられないという思いだけだった」

 起死回生の一打だけでは終わらない。12回表を馬原が抑え、8年ぶりの日本シリーズ出場が決定。12回裏の攻撃に入る前に、ほとんどの選手がベンチでうれし涙を流した。それでも、絶対に勝って決めたかった。無死一、二塁での5打席目。西武牧田の初球を中前へはじき返しサヨナラ勝利でのCS突破を決めた。

 「優勝は決まったけど、どうしても勝って決めたい思いだった」

 09年にチームトップの打率を残したが、昨季は不振に苦しんだ。09年オフに球団に直訴していた「24」への背番号変更もお預けになったままだった。競争が増した今季はオープン戦などでチャンスすらもらえない日々。「本当に悔しかったし苦しかった。チャンスをもらってダメだったんなら納得できたけど…」。それでも腐らずに、「練習の虫」がさらにバットを振りまくりレギュラーを奪い返した。「不満を考えている時間があるならバットを振ろう」。苦しみを経験したことで輝きも増した。

 右の内川に負けないMVP級の活躍を見せた左のヒットマンが、日本シリーズでも大暴れする。【倉成孝史】