<楽天6-3オリックス>◇10日◇Kスタ宮城

 初体験に思いっきりはしゃいだ。楽天枡田慎太郎内野手(25)が延長10回、左中間へ、プロ初のサヨナラ本塁打を放った。「まさか入るとは思わなかった」と全速力で走った。本塁打とわかると、ホームベース手前で少し立ち止まり「よくやるじゃないですか、ヘルメット投げるの。やってみようと思ってやりました」。ヘルメットを高く放り投げ、祝福の渦に飛び込んだ。星野監督からも強く抱きかかえられ、頭をなでなでされた。

 布石があった。2死一、二塁から岸田の初球、148キロの高め直球をとらえた。前の打者、岩村の打席。ネクストバッターズサークルで大久保打撃コーチから「直球1本でいけ」と声を掛けられた。全て直球で3球三振を喫した岩村。集中力を高めていた枡田は「タイミングを合わせてました。積極性が持ち味なので、打てる球ならいこうと思った」と狙いを定め、一振りで仕留めてみせた。

 考え方を変えてくれたのも岩村だった。開幕後、結果が出ず2軍降格。2軍戦で控えに回ることもあった。そんな時「ちょっと結果にこだわりすぎなんじゃないか」と岩村からもらったひと言が胸に響いた。「吹っ切れましたね。だめだったら、野球に向いてなかったって思えばいい」。守備に不安を抱えDH、外野、一塁で起用されるが「楽しいです。おどおどやっててもしょうがないので」とプレーに迷いがなくなった。

 失敗しても枡田を起用し続けていた星野監督は試合後、「ホームラン?

 入ったの?

 それは失礼しました枡田さん」と勘違いしていた。それでも成長を見せる若手に「涙がでるよ。(使い続けた)俺がヒーローじゃないか」とうれしさのあまり、冗談も飛び出した。9連戦初戦で劇的勝利。枡田は「1試合1試合、全力でやるだけです」と威勢良く言った。【斎藤庸裕】

 ◆枡田慎太郎(ますだ・しんたろう)1987年(昭62)7月8日生まれ、京都府出身。智弁学園から05年高校生ドラフト4巡目で楽天入団。昨季まで1軍通算38試合だったが今季は37試合に出場し、5月23日中日戦で中田賢からプロ初本塁打。178センチ、80キロ、右投げ左打ち。今季推定年俸660万円。家族は夫人と2女。