<ヤクルト6-3阪神>◇28日◇神宮

 さらば、神宮、さらば、城島-。阪神金本知憲外野手(44)が万感の思いで現役最後の関東遠征を終えた。敵地から異例の声援を浴びながら、9回、代打の打席でストレートの四球を選んだ。試合前には、同じ年にユニホームを脱ぐ城島の決断を惜しんでいた。感謝と寂しさをかみしめ、残り少ない現役生活を全うする。

 その時だけ、罵声が歓声に変わった。阪神金本が三塁側ファウルゾーンを歩く。「ちょっと行ってくるわ」。荷物を置いて、虎党が陣取る左翼席の前に向かった。プロ野球人生最後の神宮球場。左手を何度も掲げ、笑顔で歓声に応えた。

 金本

 最後か…。ここでは、何とか監督を胴上げするんだと必死にやってきた思いがあるよ。

 東北福祉大時代から、頂点を目指して戦った大学野球の聖地。神宮最後の打席は9回。バットを振ることなくストレートの四球で歩いた。ヤクルト・バーネットへのブーイングの中、一塁ベースで苦笑い。代走俊介と交代してお役御免だ。

 神宮にいた誰もが鉄人との別れを惜しんでいた。「代打金本」がコールされると、サプライズ演出が待っていた。ヤクルト選手を鼓舞する球場DJまでもが「レツゴー金本!」と声援。試合前には、ヤクルトのマスコット・つば九郎と筆談。サインを求められ、2ショットを撮影。宮本、福地からは花束が贈られた。

 金本

 ヤクルトもそうだし、巨人も感謝です。ありがたい。

 試合前、同じ年にユニホームを脱ぐ城島の引退を残念がっていた。

 金本

 10年に活躍してからは故障ばかりで残念というか、もったいない。去年も手術したらどうや、と話したんですけど、あいつの性格というか、1年半プレーできないと球団に申し訳ないと言って、手術しなかった。それが逆にこういう結果になってしまったのかな。

 敵として同じグラウンドに立ち、味方として同じユニホームに袖を通した。

 金本

 03年の日本シリーズでジョーが4本、僕も4本ホームランを打った。日本タイ記録なんですけど、どっちが新記録を出すのか、という話題もあって。すごい印象に残るプレーヤーでした。キャッチャーであれだけホームランを打てる選手は、僕が知っている中ではいない。本当にスーパーキャッチャーでした。

 一時代が終わろうとしている。その瞬間は刻一刻と近づいている。