ソフトバンク武田翔太投手(19)が3日、初の契約更改交渉に臨み、1200万円増の年俸2000万円でサインした。02年に同じく高卒新人だった寺原の2倍を上回る150%のアップ率で、8勝1敗のデビュー年を評価された。さらに週4度通う整体治療のため、特例でのマイカー利用を要望。交渉術も度胸たっぷりだった。

 マウンド上での姿さながらに、契約更改もさくさくさばいた。初交渉を終えた武田は「固い雰囲気ではなく、言いたいことを言えました」。7月にデビューし、球団の高卒新人としてはドラフト制後最多の8勝を挙げ、防御率は1・07。先発ローテーションの一角としてCSでも登板し、優秀新人賞に輝いた。「球団には、すごくいい働きをしたと言われました」。

 ただし、声のトーンはちょっぴり低い。「想像した金額と少し違って…。寺原さんが6勝したので参考にしていました」。02年に同じく高卒新人の寺原が6勝を挙げ、倍増の3000万円。昇給率150%は故郷の先輩を超えたものの、目標額とは開きがあった。

 それでも「ベースが違いますから」と今季800万円だった自分と冷静に比較。「完全には納得してないけど、来年活躍すれば取り返せるので」。しょんぼり王子からスマイル王子へと変身し「来年は1試合丸ごと投げられるようにしたい。数字的には15勝」と珍しく数字目標を掲げた。

 投球術だけでなく、交渉術も巧みだった。球団の期待を感じ取った武田は「整体に通っているので自家用車を使うことを検討して下さい」とズバッと要望。福岡市内の独身寮から、1回3000円の整体治療に多い時は週4度、タクシーで往復1万7000円をかけて通った。夏場以降で100万円近い出費だった。

 「試合で投げられたのはケアのおかげです。疲労は結構なものでした」と効果は大きいと主張した。高卒新人は、3年間はマイカー禁止という球団の原則は承知の上。ローテ投手の自覚が、時間と経費を有効活用できるマイカー申請へと発展した。球団側は検討を約束し、ルールが動く可能性も出てきた。話題を集めてきた大物ルーキーの言動からオフも目が離せない。(金額は推定)【押谷謙爾】

 ◆ホークスの主な2年目年俸

 福岡移転後、高卒選手では02年オフに更改した寺原隼人の3000万円(1500万円増)が最高額。それ以前の最高額は、94年新人王の渡辺秀一の2800万円(1600万円増)だった。大卒・社会人出身では、03年新人王の和田毅が6500万円増の8000万円。04年新人王の三瀬幸司が3200万円増の4000万円。09年新人王の摂津正が3800万円増の5000万円で更改した。