<オープン戦:日本ハム2-2ヤクルト>◇24日◇札幌ドーム

 日本ハムのドラフト1位大谷翔平投手(18=花巻東)の開幕スタメン入りが濃厚になった。オープン戦最後の試合となるヤクルト戦に「8番右翼」で先発出場。2三振こそ喫したものの、8回無死一塁から、得点につながる右前打を放ち、犠飛で同点のホームを踏んだ。凡退した打席でも随所にセンスの高さを見せつけた高卒新人が、抜てきされる可能性が一段と高まった。

 スーパールーキーが、開幕スタメンへ当確ランプをともした。投手としてド派手な157キロデビューを飾った大谷が、打者では渋い実戦向きの仕事ができる能力を証明した。8回無死一塁、オープン戦最後の3度目の打席。押本の抜けた変化球を捉え、一、二塁間を破った。本拠地初安打でつなぎ、劣勢からの同点劇を演出した。「ファンの方もたくさん応援して下さいましたし、ホームなので、どうしても1本打ちたかった。最後の最後で打てて良かったです」。

 激走で、ダメを押した。安打と死球でチームは無死満塁のイケイケムードの三塁走者。代打鵜久森の浅い右飛で、迷わず本塁へ向けスタートを切った。「打球が上がっていたので、行こうと思いました」。2軍で大半を過ごした春季キャンプでランニングメニューのタイムが常に上位。身体能力の高さに感心する先輩たちの声に「歩幅が大きいだけです」と照れ笑いしていたが、長い足は大きな武器だった。大きなストライドでスピードに乗り、悠々と同点のホームを陥れた。

 オープン戦最終戦、29日の開幕(西武戦)に向けた最後の実戦調整。栗山監督はベストメンバーを組み、大谷を8番に抜てきした。糸井がオリックスへ移籍して穴があいた右翼で起用。明らかに本番を想定していた。糸井と同じ左打者の田中もメジャーへ移籍した。小ぶりになった打線の中で、大谷はスケールの大きな左のスラッガー。この日で10試合に出場し打率1割8分2厘。それでもチームの将来性も加味して、未完成でも賭ける価値があると判断してテストした。

 投手としての荒々しい魅力の半面、打者としての非凡さを、たった一振りで見せた。空振り三振に倒れた5回の第2打席。2ボール1ストライクからの4球目だった。栗山監督は「見極めで」とあえてヒットエンドランのサインを出した。内角低めのボール、148キロ直球に反応してファウルでカットした。栗山監督は「動きが自然に出来ていた」と、あらためて18歳離れした適応力の高さを確認。スタメン抜てきに踏み切る決断材料を、大谷が示してくれた。

 球団史上2人目となる高卒新人での開幕スタメンが濃厚だ。明日26日からは2軍に合流、27日のイースタン・リーグ西武戦(鎌ケ谷)で登板予定。投手としてはまだ慣らし運転だが、打者としては1軍で難度の高い実戦テストを課し、及第点の内容を残した。右翼手の成功条件の強肩を持ち合わせており、筆頭候補だ。「反省すべきところは、いっぱいある。パワーやスピード、技術的にもワンランク上のところでやってみて課題が見つかった」。大谷は謙虚だったが、もう道は開けている。【中島宙恵】

 ▼2リーグ制後、開幕戦で先発出場した高卒新人野手は11年駿太(オリックス)まで過去12人いる。他に、開幕投手を務めた高卒新人が52年大田垣(広島)54年梶本(阪急)56年牧野(東映)と3人おり、投手を含めると15人が開幕戦で先発出場した。日本ハムでは、東映時代の59年張本が6番左翼で先発して以来、54年ぶりとなる。