阪神が和田豊監督(50)の来季続投を基本線とする方針を固めたことが11日、分かった。就任時に3年契約を結んだが、最終年は球団側に選択権のあるオプション契約だったことが判明。今季で退任する可能性がある状況で、チームは巨人を追い抜いての首位と大健闘。黄金ルーキー藤浪の育成も順調で、采配面にキレ味が出てきたことで、来季も指揮を任せる方向になった。

 阪神が来季も和田監督に指揮を任せる方針を固めた。12年に3年契約を結んだため、既定路線に見えるが、実際は違った。3年目の最終年は球団側に選択権のあるオプション契約であることが明らかになった。動向次第で、今季限りで退任する可能性もあるということを意味する。まさに正念場のシーズンとなったが、指揮官は逆境で力を発揮している。

 就任1年目の昨年は主力打者の不振に苦しみ、5位に沈んだ。オフには金本や城島といった中心選手が現役を引退。福留や西岡らを補強し、血の入れ替えに着手した。和田監督はかじ取り役として、現有戦力と新戦力のミックスという難しい役割を任されたが、スムーズに断行。注目された黄金ルーキー藤浪の育成も順調に進めている。ベンチワークもさえが見られ、1・2軍の入れ替えも活性化を図った。

 それが好成績という形で表れている。圧倒的な戦力を誇る宿敵巨人に対しては、6勝2敗1分けと優位に立つ。6年ぶりに東京ドームで同一カード3連勝を決めるなど、昨季5勝15敗4分けと大きく負け越した屈辱を晴らしている。

 チームの雰囲気もよく、9日に再び首位の座を奪った。残り4試合となった交流戦も、現在首位ソフトバンクに2ゲーム差の4位タイにつけ初優勝の可能性を残している。昨年の教訓を生かしての躍進。球団内でも、その手腕は高く評価されている。

 就任3年目の道が開けたことで、和田阪神が長期政権に発展する可能性が出てきた。球団フロントは、長期的な視点に立ち、常勝チーム化を目指している。球団首脳は「和田監督に、5年も6年もやってもらうことが理想だ」と話す。補強と育成の融合は難しい課題ではあるが、タテジマ一筋の指揮官に託したい思惑がある。

 交流戦終了後には、坂井信也オーナー(65=電鉄本社会長)との会談も予定されている。中村GMも出席し、来季も含めた今後のチーム作りに関して、意見交換が活発に行われる見通しだ。来季続投を打ち出すことで、和田体制の地盤をより強固にし、今後の戦いに集中してもらう。球団-現場がガッチリとタッグを組み、8年ぶりのリーグ制覇という「果実」を取りに行く。

 ◆和田豊(わだ・ゆたか)1962年(昭37)9月2日、千葉県生まれ。日大から84年ドラフト3位で阪神入団。以来、阪神ひと筋でユニホームを着続けて29年目。二塁手で92、94年にベストナイン、92年から3年連続でゴールデングラブ賞。97年に開幕から24試合連続安打。01年に打撃コーチ兼任となり、このシーズン限りで現役引退。通算1713試合、1739安打、打率2割9分1厘、29本塁打、403打点。02年からコーチ専任、昨季から監督。右投げ右打ち。174センチ、72キロ。推定年俸8000万円。