<ロッテ0-1DeNA>◇1日◇QVCマリン

 再出発の1勝をつかんだ。DeNA山口俊投手(26)が、07年9月19日の広島戦以来の先発で、ロッテ打線を6回2安打無失点に封じた。通算111セーブを挙げた男が中畑監督から「リリーフ失格」を突き付けられ、ラストチャンスでつかんだ先発の座で結果を出した。速球を捨てた新たなスタイルで、右腕が圧巻の投球を見せた。

 ウイニングボールを渡すのが仕事だった山口が、新守護神三上からボールを渡された。照れくさそうにボールを握った。「初勝利を思い出しました」と、プロ初登板で初勝利を挙げた06年6月29日の巨人戦の先発マウンドを思い起こした。

 いつもの力でねじ伏せる姿はなかった。4回2四球で2死一、二塁。ロッテ根元に対し、初球はスプリット、2球目はカーブ。カウント3-2となってもカーブを選び、ファウル。7球目は変化球が効き、143キロ直球で空振り三振を奪うとグラブをたたき喜んだ。

 被安打は単打2本のみと試合を支配。95球を投げたが余力十分でスタミナも問題なかった。「中継ぎで使えなかった球をうまく使うことができた」と満足げ。この日投じた95球中、14球がカーブ。さらにスプリット、シュートも加え、変化球が45球を占める別人のような投球スタイルだった。

 昨季は抑えと中継ぎを任されたが、44試合で防御率5・40。今季も防御率7・62で5月5日に2軍に降格した。中畑監督は「メンタル面で中継ぎとして限界を感じた」と、事実上の「クビ」を宣告。それでも能力を高く評価し、再生すべく先発再転向を告げていた。

 通算111セーブを挙げた男にとって屈辱でもあったが、「やるしかない」と開き直った。中継ぎ時代にほとんどやらなかった長距離走やインターバル走をメニューに取り入れ、103キロあった体重を97キロまで絞った。5月25日のイースタン・リーグ巨人戦に先発して6回1安打無失点と好投し、1軍昇格をつかみ取った。

 「2年間思った投球ができていなかった。先発として第2の野球人生と思ってやっていきたい」と心地よさそうな表情で話した。中畑監督も「先発の柱になってほしい。この投球を待っていた」と笑みを浮かべた。次回登板は8日の楽天戦に決まった。【細江純平】

 ◆主な先発転向投手

 鈴木孝政は75~77年にリーグ最多セーブの後、82年に先発転向し通算124勝。中日の後輩、小松辰雄は転向後にエースとなった。先発から救援に回った斉藤明夫(大洋)は同タイトルを3度獲得した後に先発に再転向。90年に10勝を挙げた。大野豊(広島)佐々岡真司(広島)は複数回の転向で100勝&100セーブ。牛島和彦(中日→ロッテ)は移籍を機に先発に。最近では2年連続最優秀中継ぎだった摂津正(ソフトバンク)が先発で沢村賞を獲得した。