侍ジャパンが世界一になった。準決勝、決勝で村上宗隆内野手(23=ヤクルト)のバットが火を吹いた。

史上最年少3冠王の本領を発揮した。九州学院(熊本)の先輩でもある西武高山久1軍打撃コーチ(41)は「すごい。想像を超えてきますね」とあらためて驚いた様子だった。

村上は、高山コーチにとってはアマチュアスカウトを務めた時代の視察対象選手でもあった。「その年のチーム方針が(上位指名は)投手だったので指名はできなかったですけど、3~4年後に30~40発打てる選手だと球団にプレゼンしたのを覚えています。それさえも超えてきましたね」と振り返る。

高山コーチ自身も九州学院で高校通算43本塁打を放った右の強打者として注目され、99年ドラフト1位で西武入りした。前年には、同じ九州学院の吉本亮内野手がソフトバンクに1位指名されている。

球界OBでは秋山幸二氏(60)や前田智徳氏(51)や松中信彦氏(49)も熊本県の出身で、卒業した高校も熊本県内。高山コーチは「川上哲治さんも熊本ですからね」と胸を張る。WBC決勝でも投げた戸郷翔征投手(22=巨人)をはじめ宮崎県が好投手を多く輩出するのに対し、熊本県は強打者の輩出が多い。

高山コーチは「いい選手が多いのは確かです。プロ行くんじゃないかという選手で、行ってない選手が何人もいますよ。プロに入って後輩を見ても、いい選手がけっこういますしね」と話す。中学硬式野球が盛んで、硬球により早く慣れている環境があるという。さらに。

「九州学院はとにかく、バッティングはめちゃくちゃしてましたよ。打撃練習でも5カ所くらいケージを作って、一緒に打たせて振り込んだり。昔から力入れてましたね。グラウンドの周りの山や階段も走りまくりました」

熊本県民の気質を「貪欲」と表現する球界関係者もいる。高山コーチも「貪欲…向上心はありますよね。村上なんか、高校時代からベンチでも監督みたいな感じで野球してましたからね」と当時を回想する。

高山コーチは現在、1軍コーチとして熱心に指導する。西武には中熊、川野と“肥後の系譜”を目指しメラメラ燃える若者もいる。「それにしても常に期待を超えてきますね」と再び村上をたたえる。なぜ熊本から-。そのナゾは「僕も分析してみます」と笑っていた。【金子真仁】