プロレス大好きな「ベッド・イン」の益子寺かおり(撮影・酒井清司)
プロレス大好きな「ベッド・イン」の益子寺かおり(撮影・酒井清司)

地下セクシーアイドルユニット「ベッド・イン」のボーカル益子寺かおり(33)は、メジャーからインディーまで観戦し、時にディーバとしてリングにも上がる自称「プロレスチン善大使」。自分の人生を変えたプロレスへの愛をたっぷり語ってもらいました。【取材・構成=高場泉穂】

飯塚高史
飯塚高史

2人のプロレスラーが益子寺の人生を変えた。仕事も、恋愛も、バンド活動もうまくいかず、OLとしてくすぶっていた08年の年明け。初めて観戦した新日本の1・4東京ドーム興行で飯塚高史に心奪われた。「やまだかつてない立ち振る舞いにビビビッときたんです。飯塚選手はヒールを貫いていて、私生活も謎に包まれたミステリアスさがある。さかのぼって飯塚選手が正統派ベビーフェースだったと知った時に、こんなに人間って変われるんだと、ぶっとびぃ~!その姿を見て、当時まだステージパフォーマンスに迷いがあった自分も、振り切る覚悟ができたんです」。

中邑真輔
中邑真輔

多大な影響を受けたもう1人はWWEで活躍する元新日本の中邑真輔。09年11月の新日本両国大会で中邑が発した言葉で、ある決断をした。『未来は俺が作る。生きたいように生きる。なりたい自分になる』。その言葉をおナマで聞いたとき涙が流れた。「もっと自分に正直に生きよう。音楽活動に専念しよう」と、すぐに脱サラした。それから約10年。益子寺はバブル文化をリスペクトしたボディコン姿で活躍を続ける。

多忙な日々の中でも、3カ月先までの気になる興行をカレンダーに記し、時間が空けば、ふらっと当日券を買って1人でも観戦に行く。現在進行形のプロレスだけでなく、昔のプロレスも敬愛し、お宝のVHSを収集している。なぜそんなにプロレスを愛するのか。「生きざまがぶつかり合う唯一無二のエンターテインメントスポーツだから。体をはって、命をかけて戦っているからこそ、より心に響くものがある」。また、現代の文化に希薄な「余白」があるからだと熱弁した。「見て、考える余白があることに情緒を感じます。もともと昭和歌謡の深い比喩表現や、伏線回収が必要な映画がスキスキス-で。すべてを説明しないプロレスこそ、今の時代にとって大切な存在だと思います」。

14年からはDDTを中心にさまざまなプロレス団体のリングにも上がり、バラモン兄弟から派手に墨汁ミストを受けるなど全身全霊のパフォーマンスをみせている。本業のライブMCがレスラー口調になってしまうほど、益子寺の人生とプロレスは深く結びつく。「生きざまを教えてもらい、強さをくれたプロレスに恩返しがしたい。魅力を伝えていけるようにガンバルンバします!」。ポケベルが鳴れば、プロレスのためにどこでも参上するつもりだ。

お宝のVHSビデオテープを手に笑顔を見せる「ベッド・イン」の益子寺かおり(撮影・酒井清司)
お宝のVHSビデオテープを手に笑顔を見せる「ベッド・イン」の益子寺かおり(撮影・酒井清司)

◆益子寺(ますこでら)かおり 1985年(昭60)7月14日、横浜市生まれ。12年にギター担当の中尊寺まいと「ベッド・イン」結成。80年代末から90年代初頭のバブル文化をリスペクトしながら、セルフプロデュースで活動中。今年4月にはバブル期のヒット曲のカバーアルバム「Endless bubble」をリリース。