ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が4団体統一を狙う階級に「不気味」な王者がいる。WBA世界同級正規王者ギジェルモ・リゴンドー(40=キューバ)は8月14日(日本時間15日)、米カーソンのディニティヘルス・スポーツパークでWBO世界同級王者ジョンリール・カシメロ(31=フィリピン)との王座統一戦に臨む。この勝者が将来的に井上と拳を交えるだろう。「モンスター」の対抗王者は発信力のある他団体王者よりも影が薄いからこそ、侮れない存在と言える。

当初からカシメロとの統一戦に臨むはずだったリゴンドーは不遇な立場にあった。一時はWBC王者となったドネアにポジションを奪われ、カシメロ戦が消滅した。しかしドーピング検査に関した両陣営の取り決めが遅れ、ドネアら家族に侮辱発言したカシメロ側のミスでキャンセル。二転三転し、リゴンドーが元のさやに戻った。すると、これまで正規王者として静かだったはずのリゴンドーが発信を開始した。

あらためて興行主から統一戦が発表されると、VADA(ボランティア・アンチドーピング協会)の書類を提出したことをSNSで明かし「私はきれいなファイター。ボクシングに汚れたファイターを入れてはいけません」とカシメロを挑発するようなコメントを出した。さらに米専門サイト、ボクシング・シーンのインタビューでは「カシメロの夢を台無しにするプランがある。トレーナーのロニー・シールズといくつかの新しいトリック(技術)を取り組んでいる。彼をKOしても驚かないでください」とも豪語した。

さらに「カシメロの周りにボクシングのサークル(囲い)をつくり『エルチャカル(肉食動物ジャッカル)』が何であるかを彼にみせる」と牙をむく姿勢を示した。もともと五輪で2度金メダルを獲得し、プロでも世界2階級制覇王者。井上も6月14日のジムワーク再開時に「リゴンドーが倒す可能性も十分にある。カウンターパンチがうまい。(カシメロの)スピードのない大振りなパンチならばリゴンドーの格好のえじきになりますね」と予想していた。全盛期ではないものの、ヒット率の高い左ストレート、軽快なステップワークは健在で、リゴンドーは決して侮れない存在だ。さらに発信力も増してきた今、不気味さのオーラも大きくなっている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)