JR両国駅に最も近い国技館の南門は、力士らが出入りする。入ってすぐの詰め所に、世話人の友鵬さん(享年60=大嶽)はいつもいた。亡くなって2日後の秋場所初日。不在の友鵬さんに代わって、似顔絵、遺影、花が飾られていた。

 「世話人になくてはならない存在だよ」と、40年以上の付き合いになる世話人、白法山(61)は言う。世話人は雑務全般をこなす裏方中の裏方。友鵬さんは多くの力士から慕われ、内外の関係者や好角家に知られた名物的存在でもあった。

 大鵬部屋でともに育った大嶽親方(元十両大竜)は初日の前日、力士を集めて言った。「弔いの場所になる。みんな死ぬ気でやろう。忙しいのを言い訳にしちゃだめだ」。稽古場に祭壇が作られ、棺(ひつぎ)とともに愛用していた帽子が置かれた。

 部屋唯一の関取、大砂嵐は白星発進した。8月の所沢巡業後、タクシーに友鵬さんと同乗した時の話が忘れられない。65歳の定年後のことを聞くと「宮古島に帰って、海の前でゆっくりする。そうなっても俺のこと、忘れるなよ」と言われた。エジプトから来日し、すべてを教えてくれた恩人を忘れるわけがない。

 通夜は今日11日、午後6時から大嶽部屋で営まれる。【佐々木一郎】