200キロを超える体格を生かした押し相撲を武器に、初土俵から所要8場所のスピード出世で注目を集めた元十両高立の高木立太さん(29)が、夏場所限りで現役を引退した。ケガの影響もあり、近年は幕下と三段目を行き来する成績が続いていた。3日までに電話取材に応じ、現在の心境などを明かした。

先月24日に引退が発表されて約1週間が経過した。夏場所後、故郷の石川県金沢市に戻ったという高木さんは「毎日ずっと相撲のことだけ考えていたので、本当に辞めたんだなと不思議な感じがする」と、まだ引退の実感がはっきりと湧いていない様子だ。

拓大から木瀬部屋に入門して、初土俵は14年春場所。新弟子検査では200キロを超える体重を計測して周囲を驚かせた。序ノ口デビューから1年後の15年夏場所で幕下優勝。翌場所で新十両昇進を果たし、さらなる出世が期待されたが、十両在位は同場所の1場所だけだった。右膝の負傷などに悩まされ、思うように力を発揮できなかった。

引退のきっかけは右肩のケガだったという。長年の蓄積で肩関節が変形し、昨年7月場所後に手術をした。「歩いていて一般人とぶつかったりするだけでしびれたりした。手術して骨と骨の間の軟骨がない状況なので、腕を上げたら骨と骨がぶつかって、ごりごりと音がする。その痛みがいつ取れるのか分からなくて、肩に強い痛み止めとかも打っていたけど、限界だった」。

西三段目23枚目だった夏場所は全休。師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)にも「自分の体を大事にしなさい」と励まされてきたが、復帰は難しい状況だった。「ケガがなかったらと考えるのはタラレバになる。それを言ったらキリがないし、男らしくない」。きっぱりと決断して、土俵に別れを告げた。

7年間の力士人生では土俵の思い出以上に、周囲への感謝が募るという。「(十両に)上がるまでにいろんな方に稽古をつけてもらった。(兄弟子で昨年11月場所限りで引退した元小結)臥牙丸関には毎日のように胸を出してもらった」。特に目をかけてくれたのが、長く付け人を務めていた兄弟子の十両常幸龍(32)。「家族ぐるみで自分のことをかわいがってくれた。常幸龍関の奥さんも子どもも『高木くん』『高木くん』とずっと言ってくれて…。常幸龍関には一番頑張ってもらいたいです」。

断髪式はコロナ禍の影響もあり未定。かつて200キロを超えていた体重は現在180キロで「これからガンガン落とそうと思っています」と笑う。

今後の進路は熟慮している。「人と接するのが好きなので、そこを生かしていきたい。いかんせんずっと相撲だけの人生で、相撲のことしか知らない。今まで逃げ出さずにやってきたことは間違いないことなので、いろんな人に話を聞いて、視野を広く持って考えていきたい」。迫力のある取り口で注目を集めた29歳は、第2の人生に向けて歩みを進める。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)