前日本スーパーバンタム級王者で同級4位石本康隆(35=帝拳)が再起戦を意地のKO勝利で飾った。フィリピン同級10位アルネコ・バコナヘ(23)を7回に2度のダウンで沈め、2分38秒で10カウントを響かせた。

 序盤は打ち終わりに合わせてくる相手の強打に劣勢となり、2回にはバッティングで左の眉間をカットする苦しい展開となった。ストレート、フックと度々右をもらい、「危なかった。効いているようにみせないようにした」と守勢が続いた。流れが変わったのは、4回。ジャブからリズムをつかみ、パンチを下へ下へと集めていくと、パコナヘの口が開き始める。

 試合を決めたのは7回。苦しさ極まった相手が一気に攻勢に出て連打を浴びせかけてきたが、しっかりとブロックで受け止めると、力強く打ち返す。コーナーに追い詰めて左ボディーから右の返しで最初のダウンを奪うと、立て続けにボディー打ちを続けて、最後は左の一撃で試合を決めた。キャンバスにうずくまるパコナヘに襲いかかろうとして空振りの一発を放ったが、「あんまりあんなことやる方じゃないので、やったことがビックリです。2度と立てなくしようと殴ってましたが、最後のは当たらなくて良かった」と本人も驚きの姿があった。それほどまでに勝ちたかった。

 2月に3度目の防衛戦で久我勇作(ワタナベ)に敗れて王座陥落し、1度は引退も考えた。35歳の現役続行には大きな覚悟がある。「この試合をタイトルマッチと思ってやってきた」という気持ちの強さは、最後の「空振り」にも見て取れた。ジャブからワンツー、それにうまさを備えて日本王者となった姿とは違うたけだけしさ。それがこの日のリングにはあった。

 「15年ボクシングをやってきて、いまが一番モチベーションが高い」という。試合前にも「試合を終わって早く練習がしたい」と口にしていた。ダメージが残る試合をしたことで、「スカッと勝って、次、タイトル戦と言いたかったですけど、これじゃあみんなに体の心配をさせちゃいますね」と王座奪還の道の厳しさは自覚する。ただ、試合後の紅潮した顔に笑みを浮かべる35歳の進む道は、これまでよりも絶対に充実した歩みになりそうだ。