【カーソン(米カリフォルニア州)8日(日本時間9日)=奥山将志】WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(24=大橋)が、「ボクシング人生の分岐点」で世界を驚かす。米国デビュー戦となる同級7位アントニオ・ニエベス(30=米国)との6度目の防衛戦は今日9日(同10日)にゴング。会場となるスタブハブ・センターでの前日計量をリミットでパスすると、堂々のKO宣言で本場でのアピールを誓った。

 「ボクシング人生の分岐点」。報道陣に囲まれた井上は、翌日に迫った試合をそう表現した。計量をリミットの52・1キロでパスすると、日本の応援団に向かって拳を突き上げてアピール。同じく1回でパスし、雄たけびを上げたニエベスと2日連続でにらみ合い、「初回からフルでいく。チャンスが来ればKOを狙う」と表情を引き締めた。

 米初陣は、本場の心をつかむ絶好機だ。米国では異例の軽量級中心の興行で、「SUPERFLY」の名のもと、同じ階級のビッグネームが集結。4階級王者ゴンサレス、ゴンサレスにプロ初黒星を付けたシーサケット、フライ級で2団体を統一したエストラーダ、WBC王座を6度防衛したクアドラス。4人のライバルと比較される中で存在をアピールできるかは、今後のキャリアにも直結する。

 減量苦からバンタム級転向も視野に入れる大橋会長も“品評会”さながらのこの状況を歓迎。「どの階級でやるにしても、彼らを目の前に引きずり出すことが重要」と今後の対戦を意識した一戦だと強調した。プレッシャーを背にリングに立つ井上は「ここにセッティングされた意味は分かっている。仕上がりは過去最高。すべてにおいて期待に応えたい」と力を込めた。

 計量を終えると、昼はうどん、夜はステーキを食べ、しっかりと回復。プロデビューから5年。歴史を塗り替え続けてきた日本の才能が、世界に殴り込みをかける時が来た。

 ◆日本人王者の海外での防衛(海外選手相手) 成功したのは過去5人(7例)。85年に渡辺二郎が敵地韓国で勝利したのが初めて。西岡利晃は09年にメキシコ、11年に米国で防衛に成功。13年に三浦隆司がメキシコ、亀田興が韓国で勝利。14年には亀田和が2度米国で勝利している。米国で米国人選手を相手に防衛を果たせば、井上が初めてのケースとなる。