WBC世界ライトフライ級王者拳四朗(26=BMB)が完璧に4連続防衛を達成した。挑戦者の同級5位ミラン・メリンド(フィリピン)に打たせず、打つスタイルを実現させ、7回2分47秒TKO勝ちを収めた。八重樫や、田口のベルトを奪ったブドラーら歴代世界王者を破った強敵を退け、階級最強をアピール。色物ネタ連発の癒やし系王者が、国内ジム所属の現役王者で最長の防衛数を更新、安定政権へ大きな1歩を踏み出した。

有言実行だ。7回2分過ぎ、レフェリーが試合を止めた。6回にカットしたメリンドの左目上の傷口をドクターに見せ、すぐにゴングを要請。「一瞬、え、終わり、と思った」という拳四朗は、勝利インタビューで「あれはKOになるんですか?」ときょとん。「絶対KO」と予告した通り、3戦連続KOで国内ジム所属の現役世界王者最長の防衛数を4に伸ばした。

「距離感」で、リングを支配した。分岐点はV3戦。昨年5月に僅差判定で王座を奪ったロペスを2回KOで退けた。オーソドックスより間合いがとりづらく、近くに感じるサウスポーを完封。「数センチ単位の感覚」を手に入れた。

この日は完璧だった。1回は左ジャブだけ。2回に右を数発交ぜ、3回から右ストレートを当て始めた。「右は確実に距離をつかんでからと思っていた。向こうが来ても足で逃げたら、追ってこられなかったし」と作戦を説明。2回にもらった右フックも「いなしてたし。効いたパンチ、ないですね」。もらわず、当てる。アニメ「北斗の拳」の兄弟でいえば、ケンシロウというより、トキ。華麗な技で、静かに元IBF同級王者を葬った。

5度の世界戦でメインイベントが1度もない。所属のBMBジムが興行を行わず、WBAミドル級王者村田や“怪物”井上尚らビッグネームのビッグマッチに“便乗”するためとはいえ、極めて珍しい。リング外は軽やかに楽しむ。自慢のボディーで“新宿2丁目応援団”ができ、調印式は父の寺地永会長とちょうネクタイの“親子漫才コンビルック”。前日計量では背中に「The Amazing Boy 拳四朗」のボディー書道も見せた。

14戦全勝8KO。今後も階級を替えず、ライトフライ級一筋。目指すは具志堅用高氏の持つ13連続防衛の日本記録だ。「今回の試合後が、一番普通かな。試合やったんかなって。自分のボクシングが完成してきたような」。主役の座は、もうすぐそこにある。【加藤裕一】

◆国内ジム所属世界王者の4連続防衛 WBA世界ライトフライ級王者田口良一(7連続防衛後の5月20日に陥落)以来。最長記録はWBAライトフライ級王者具志堅用高の13連続。