WBO世界スーパーフェザー級王者伊藤雅雪(27=伴流)が初防衛に成功した。

同級1位エフゲニー・チュプラコフ(28=ロシア)と、米国での王座獲得から5カ月ぶりで凱旋(がいせん)防衛戦。王座を奪取した攻撃的ファイトを見せた。3回には偶然のバッティングで左目上から流血するアクシデントもあったが、連打でたたみかけた7回、相手陣営がたまらずタオルを投入。初の日本での世界戦でメインを張り、TKO勝利で今年国内最後の世界戦を締めた。

試合後は「素直にうれしい。これだけたくさんの人の前でベルトをまいた姿を見せることができてうれしいです」と笑顔で声を張り上げた。

伊藤は7月に日本人として37年ぶり5人目となる、米国で王座を奪取した。4回にはダウンを奪う快勝も「相性がよかった」「フロック」という声も聞こえてきた。

さらにプロとアマの違いはあるものの、業界では日本ボクシング連盟山根会長の問題が大騒動へ発展していた。伊藤の影は薄く「話を持っていかれて寂しい」とガッカリしていた。「初防衛して王者としての実力を示したい」と臨み、20戦全勝(10KO)の指名挑戦者を退けて見せた。

世界初挑戦は米フロリダで、初めての海外での試合だった。今回は初の国内での世界戦でメイン。連日の行事も終始笑顔でこなし「いろんな意味で日本の方が楽。今までで一番いい状態で、100%が準備ができた」と話していた。前回は家族を含めて約50人だった応援も、20倍の約1000人になっていた。

15年からエルナンデスと岡辺の両トレーナーに指導を受け、米ロサンゼルスでのスパーリング合宿が試恒例になった。今回は1日20回こなす日もあり、300回以上のスパーを積んだ。以前はカウンターパンチャーが、積極的に前へ出る攻撃スタイルへと改造してきた。

挑戦者のチュプラコフには身長7・5センチ、リーチで13センチ上回っていた。このサイズ差も生かして、ジャブを繰り出し、先手先手をとって試合を支配する作戦だった。

世界初挑戦では初回から前に出て、今までになかった連打を何度も打ち込んだ。今回は接近戦で30センチ程度の空間をはさんでのジャブも磨いてきた。「前回つかんだ感覚から完成形が見えて来た」と手応えを得ていた。

14年にはオーディションに合格し、JRAのテレビCMで竹野内豊と共演している。王座獲得後の8月には、女優の吉岡里穂らが所属する芸能事務所「エー・チーム」と契約した。目立ちたがり屋のイケメン王者。今後はテレビ出演も増えそうだ。

V2戦は来春を予定し、統一戦やビッグネームとの対戦を熱望する。駒大高3年でジムに入門した時はライセンス取得が目標だった。デビューすると「ウィキペディアに載る」、東洋太平洋王者になると「世界」と目標を上げて実現してきた。

「僕には一撃必殺のパンチもないですし、井上尚弥君みたいなスペシャルな選手にもまだまだなれないですけど、ハートがある。そういう気持ちをどんどん見せていって、僕にしかなれないチャンピオンになっていきたい。来年はもっと大きな試合をして、強い相手とどんどん戦っていきたい」と伊藤。次なる目標へ飛躍を誓った。