41歳の挑戦は70秒で幕を閉じた。第8代修斗世界ウエルター王者川尻達也(41)はパトリッキー・フレイレ(33=ブラジル)に1回1分10秒TKO負け。グランド勝負を狙ったが、ボディーにパンチ、左ミドルキックを浴びて後退、跳び膝蹴りを左側頭部に食って、崩れ落ちた。相手の右脚にしがみつく執念を見せたが、パウンドの連打を浴び、レフェリーに止められた。

フレイレは米国大手格闘技団体ベラトールで10KOの記録を持つ圧倒的打撃が売り物。戦前予想で「川尻不利」の声が多数を占める中「正直イライラします。“不利じゃねえよ”と」と話していたが、試合後は「強かったですね。パンチの相打ちで“こんなに硬えパンチなんだ”と思った」と完敗を受け入れた。

世界一へ、3度目のライト級GPだった。20代はPRIDE。「当時は傲慢(ごうまん)で。自分は世界最強、1ミリも負けることは考えていなかったけど、五味隆典にぶっ飛ばされた」。30代はDREAMでも失敗。今回は「最後のチャレンジ」と位置づけた。

「自分の器を知りつつも世界一になりたかった。それでも、勝てなくて…」と言うと絶句した。

泣きながら笑って「悔しいけど、ある意味すっきりしました。持たざる者代表で戦ってきて、いつか報われるかな、と思ったけど、そんなに甘くない。それが魅力ですね。格闘技最高」と話した。

今後は「茨城でジムとかやりたい。いい物件あれば教えてください」と笑わせたものの、引退は否定した。「生涯現役。年間何試合もできないけど、50代、60代とか。80歳でRIZIN538とかね」と冗談を交えて戦い続ける意思を表明した。その一方で「僕は厳しい道を来たけど、楽しかった。それを教えたい」と後進の育成にも力を注ぐ。

リングサイドでは妻、長女が観戦した。「少し話しました。奥さんは“大丈夫?”と。娘ですか? アイス食べてました。おいしそうに」。“勝ったパパ”は見せられなかったが、最後まで勝負を投げない“強いパパ”の姿は見せた。