ボクシング3階級制覇王者のWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が日本人世界王者初となる複数王座の同時防衛を達成し、階級最強を証明する。11月7日、さいたまスーパーアリーナで控える5階級制覇王者のWBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)とのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝に向け、28日に横浜市の所属ジムで練習を公開。WBA3度目、IBF初防衛の懸かったキャリア最大のリングへ、意識を高めた。

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落ち着いた口調だった。井上はドネアとの決勝に向け、1つのテーマを掲げた。「世代交代だと。あこがれて技術を盗んでいた選手との決勝を誇りに思う。キャリア一の試合をしたい」。練習公開は1回のミット打ちのみで約10分間。日本人初のベルト2本の同時防衛に向け、最終調整に集中したかった。

5月のWBSS準決勝でロドリゲス(プエルトリコ)を2回TKOで撃破し、WBA王座の2度目防衛、IBF王座の獲得に成功した。過去には井岡、高山、田口が2つの王座を同時に保持したものの、井岡と高山は防衛期限などの問題で返上。田口は日本人で初めて2本のベルトを懸けて防衛戦に臨んだが、王座陥落した。階級最強を証明するリングは、日本ボクシング界の大きな記録の1つになる複数王座防衛成功も懸けた大切な一戦となる。

ドネアは45試合という戦績を重ね、統一王者や五輪金メダリストらさまざまなタイプの世界王者と拳を交えてきた。駆け引き上手な5階級制覇王者に対し、井上は「キャリアだけは侮れない」と警戒。その上で「自分はドネアよりも若さとスピードがある。そこで戦いたい」と強調した。

所属ジムの大橋会長が「決勝ですごい勝ち方をすれば限りなくパウンド・フォー・パウンド(階級超越の最強王者)1位になるのではないか」と分析した。世界から注目される階級最強を決める決勝。日本が誇る怪物は、WBSS制覇と複数王座の同時防衛という2つの日本初を成し遂げるつもりだ。【藤中栄二】