王者田中恒成(24=畑中)が、失神KOで3度目の防衛に成功した。同級10位ウラン・トロハツ(26=中国)を序盤から圧倒。3回に強烈な左アッパーでダウンを奪い2分29秒、カウントアウトした。田中は15勝(9KO)無敗。具体的なプランは避けたが、20年はスーパーフライ級に上げての4階級制覇へ、意欲を示した。

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挑戦者は横たわったまま動かない。3回、田中の右からダブルの左アッパーがさく裂。戦意を失ったトロハツにレフェリーは10カウントを告げた。王者は「いい試合で満足している。気持ちよく年を越せます」と会心の勝利を堪能した。

今回のテーマに掲げたジャブが機能した。「下(腹部)を嫌がっているのが分かった」と2回はボディー攻め。動きを止めてアッパーで仕上げた。「1ラウンド目から支配できたから早い回にKOできた。地に足をつけて打てたのでよかった」。畑中清詞会長(52)は「今までの世界戦で1番じゃないか」と絶賛した。

「もうひと皮むけたい」。世界最速タイの12戦目で3階級制覇、無敗で王座に君臨しても「勝ち続けても、もやもやする試合ばかり」と言う。要因は「体調よく試合に臨んだことはほとんどない」というコンディション作りにある。前回、8月のゴンサレスとのV2戦で勝利もダウンを食らった。「体調がダメだった。減量、苦手なんですよね」。食生活を見直し、減量の幅を10キロ内に抑えた。

父の斉トレーナー(52)は「自分で痛い思いをしたから。何時に何cc飲んだかとかすべてメモってる」と自己管理の徹底ぶりを明かす。10キロ以降は歩いていた苦手なロードワークも最高15キロに距離を延ばした。自分で覆っていた殻を打ち破り、圧勝劇につなげた。

20年。畑中会長は「来年中に4階級(制覇)に向かいたい気持ちはある」と言った。新たな挑戦は田中も望むところ。「チャレンジして負けてなのか、勝ち続けてかは分からないが、どんな形でも変化を起こしたい」と強く誓った。【実藤健一】

◆田中恒成(たなか・こうせい)1995年(平7)6月15日、岐阜県多治見市生まれ。幼少期から空手をはじめ、中京高(岐阜)でインターハイ、国体優勝。13年11月にプロデビュー。14年4月に中京大進学。同年10月、4戦目で東洋太平洋ミニマム級王者、15年5月、日本選手最速の5戦目でWBO世界同級王座を獲得。16年大みそかに同ライトフライ級王者、18年9月に同フライ級王座を獲得し世界最速タイ12戦目で3階級制覇。身長164・2センチの右ボクサーファイター。