WBA、IBF世界バンタム級統一王者井上尚弥(27=大橋)が9日、オンラインで会見し、10月31日(日本時間11月1日)に、米ラスベガスのMGMグランドで、WBO同級1位ジェーソン・モロニー(29=オーストラリア)と対戦すると発表した。

WBAは4度目、IBFは2度目の防衛戦。当初は4月にWBO王者カシメロ(フィリピン)との3団体統一戦を予定も、コロナ禍の影響で延期となり、半年遅れでラスベガス初陣の舞台が整った。約1年ぶりの試合で「怪物」の新章が幕を開ける。

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19歳のプロデビューから8年、引退時期と公言する35歳まで、残り8年。4月で27歳になった井上は、モロニー戦のテーマについて「折り返しであり、区切り。第2章のスタート」と表現した。当初予定されていたカシメロとの3団体統一戦が延期となり、約1年ぶりのリング。コロナ禍後、日本人で初の世界戦に「ベルトがかかっているかは関係ない。この状況で試合ができることに感謝しながら戦いたい」と力を込めた。

半年遅れとなったラスベガス初陣は、井上にとっても未知の舞台となる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、試合は無観客で行われる予定。大橋会長も、現地での練習環境や行動制限などについて「現時点では分からない」と話すなど、通常とは異なる調整を強いられる可能性は高い。井上は、いとこの井上浩樹が7月に行った無観客試合を観戦し、「引っかかった」と通常の試合との違いを実感。ジムでの練習を音楽を消して行っていると明かし「ピンチになった時の精神力が重要。リングに立った時にどう感じるか。集中力が大切になってくる」とイメージを膨らませた。

モロニーは、井上が優勝した昨年の「ワールドボクシング・スーパーシリーズ」初戦で、井上が準決勝で下したロドリゲスと対戦し、1-2の判定負け。それでも井上は「タフでスタミナがあり、技術も高い。カシメロより穴のない選手」と実力を認め、「しっかり対策していかないと危ない相手」と気を引き締めた。

昨年11月のドネア戦で右目眼窩(がんか)底骨折、右まぶたのカットに見舞われたが、試合から遠ざかったことで「今は万全の状態」と不安はなくなった。「KO決着なら序盤か中盤。後半にもつれたらお互いの精神力の戦いになる」と井上。日本が世界に誇る「怪物」が心身を研ぎ澄ませ、ゴングの時を待つ。【奥山将志】