ボクシングのWBO世界フライ級3位中谷潤人(22=M・T)が、同級1位マグラモ(26=フィリピン)との王座決定戦に8回2分10秒、KO勝ちし、新王者となった。

大橋ジムの大橋秀行会長(55)は中谷の接近戦の技術を絶賛。長期政権にも太鼓判を押した。

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日本ボクシング界に新たなスターが出てきたと言っていいぐらい、中谷は強かった。特に素晴らしかったのが、2ラウンド目以降の接近戦だ。マグラモが得意とする距離にもかかわらず、ブロッキングで攻撃をかわし、インサイドからの強いアッパーで、完璧に試合のペースをつかんだ。

ディフェンスでは、サイドステップで微妙に立ち位置を変えることで、マグラモが強いパンチを打てない場所に、常に体を持っていっていた。相手は、自分の土俵で打ち負け、なすすべがなくなった。7ラウンド以降は、再び距離を取り、最後はマグラモがまったく見えていない左のロングフック。遠くで勝ち、近くで勝ち、再び遠くで倒す。準備していた作戦通りの、理想的な展開だったと思う。

変幻自在の中谷の動きを見ていて、(元WBA世界フライ級王者の)レパード玉熊さんを思い出した。レパードさんも173センチとフライ級にしては背が高かったが、ほとんどの選手が接近戦のショートの連打でやられていた。中谷は、レパードさん以上にパンチがあると思うし、実際に向き合うと、やりにくく、恐怖感を感じる選手だと思う。

KOできる派手さもあるし、技術力が高いので、長期政権も狙えるだろう。1つ上のスーパーフライ級には井岡、田中らもいる。身長が高いので、複数階級制覇も期待できるし、ボクシング界を盛り上げていく存在になってほしい。(元WBC、WBA世界ミニマム級王者)

◆レパード玉熊(本名・玉熊幸人) 1964年(昭39)1月25日、青森県生まれ。83年5月に国際ジムからプロデビューし、90年7月に李烈雨(韓国)に勝利し、WBA世界フライ級王座を獲得。91年3月に王座陥落し、引退。戦績は27勝(13KO)5敗1分け。