二刀流レスラーが誕生した。競輪選手の川上真吾(34)が「SHINGO」のリングネームで兼平大介(36)と対戦し、プロレスデビューした。

2日前まで取手競輪に出場していた川上。試合前は「絶好調です」と話していた。緊張からか、入場はスムーズではなかったが、ゴングが鳴ると「オリャ~」と叫びながら兼平めがけて飛び込んでいった。結果は9分6秒、逆エビ固めで敗れたが、高さのあるドロップキックや、体重100キロの兼平を豪快に投げ飛ばすなど、会場を盛り上げた。プロの厳しさを教えられたが、鍛え上げられた肉体から繰り出される技は、今後を期待させるものだった。

「00年の新日本ジュニア、特に獣神サンダーライガーが好きだった」という川上。当時からよく会場に足を運んだという。18年7月「筋トレするのにプロレスの道場でできたら最高」とヒートアップの門をたたいた。昨年11月に競輪選手の旅行の幹事を任され、「大会場より、近くで見た方がいいかな」と自分の通うジムの見学を提案。自身がリングに上がり、レスラーにやられているシーンを見た仲間が大爆笑。「プロレスで人を楽しませられる」と引き込まれ、今年1月にプロになりたいと志願した。

もちろん、競輪が主戦場であることに変わりはないが、中途半端な気持ちではない。「競輪を長くやってきて、自分の立ち位置みたいなものも分かってきた。他にやりたいことは何かと考えていたときに、田村社長が背中を押してくれた」と明かす。10月のプロテストは1発合格。鍛えた下半身でスクワット、腕立て、腹筋、背筋、縄跳び、すべてのメニューをきっちりこなした。

現在は競輪の試合がない週にできる範囲でジムに通う。「プロのレスラーは上半身の厚みが全然違う。自分はまだまだ」と成長途上。二刀流が簡単ではないことは理解している。「試合が決まったら、ケガにも注意しないといけない。両方の足を引っ張らないように頑張りたい」。競輪選手「川上SHINGO」のプロレスラー人生がスタートした。【松熊洋介】