格闘技イベントRIZIN28大会が13日、東京ドームで行われる。同会場で総合格闘技の大会が行われるのは03年11月のPRIDE以来18年ぶり。

榊原信行最高経営責任者(CEO、57)が、15年RIZIN立ち上げ当初から目標にしてきた夢の舞台での祭典がいよいよ開幕する。

日刊スポーツでは同大会の見どころを紹介する。第1回は極真空手出身の“ブラックパンサー”ベイノア(25=極真会館)-サラリーマンファイターの弥益ドミネーター聡志(31=team SOS)。

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ベイノアは主戦場としているキックボクシングでも、初参戦となる総合格闘技(MMA)の舞台でも、空手を基本としたスタイルを変えずにリングに上がる。「どんなルールでも、どんな階級でも強いやつは強い」。

オープンフィンガーのグローブで戦うが「キックボクシングよりもいい打撃ができる」と空手の技が出しやすくなるととらえている。

小4から空手道場に通い、18年全日本ウエート制選手権の軽量級優勝の実績を持つ。格闘家としてもJ-NETWORK、RISEで王者に輝いた。「MMAはまだ早いのでは」という周囲の声を一蹴。「いつ何時でも空手でやってきた。そういう意味では10歳からMMAをやっている」。

9日の公開練習では普段通りの空手の技を披露。「これで自分の動きのすべてができました」と自信を見せた。

お笑い芸人としても活動しているベイノア。現在活動をあまりできていないが、試合や会見ではユーモアのあるマイクパフォーマンスで会場を和ませる。「いつも考えず、その場で思いついたことを言っている。勝ったらリング上から言いたいことは言おうかな。爆笑で東京ドームが破裂しないか心配です」と語った。

会社員として働きながら戦う弥益との対戦を自ら「サラリーマン対お笑い芸人」と話す。「固定給のある相手に比べて、芸人の収入がゼロである私。専属の格闘家として強さを見せたい」と語った。

1日の会見では、ビデオメッセージの弥益に内容で“完敗”した。「キックボクシング王者のベイノア選手が老舗MMA団体の元王者を相手に選ぶという並外れたリスクマネジメント能力の低さ、リテラシーの欠如によって出場機会をいただけた」と挑発された。

ベイノアは「非常に知的な印象。さすが人生経験が豊富で営業活動でしゃべりも勉強しているな」と素直に認めたが、持ち味のトークでも負けるわけにはいかない。

あいさつの最初には必ず「東京都板橋区成増から来た」と話すほど、地元を愛している。「緑が多く、子どもたちが元気で非常に暮らしやすい」。同じ中学出身のとんねるず石橋貴明には「幼少期から意識していたので機会があったらぜひお会いしたい」とあこがれを抱く。

「空手でベルトを取ってきた。その実績で今回の出場が決まったと思っている。RIZINでもそれが通用すると信じてやってきた」。成増のスターが第1試合からド派手なパフォーマンスで東京ドームを盛り上げる。

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対戦相手の弥益は、昨年大みそかの朝倉未来戦以来、2度目の参戦となる。それまではDEEPを主戦場としており、18年10月にはフェザー級王者にも輝いた。1日のカード発表会見は仕事のため欠席。ビデオメッセージで「1階級下の選手を指名するという、チャレンジングなんだか、保守的なんだか分からないベイノア選手ですが、ノーガードで打ち合いましょう」挑発混じりの言葉を入れながら、意気込みを語った。

翌2日には、YouTubeで冷静にコメント。5月上旬に周囲から「自分の試合はない」と聞き、肩を落としていたところ、5月末に急きょ出場の連絡が来たという。

「連敗中で競技者としての価値も落ちてしまっているが、いただいたお話はありがたく受けたい」と出場を決めた理由を明かした。

ベイノアについては「連敗している自分を選んでもらったことに感謝しているが、その選択をしたことは全力で後悔させたい」と軽めの“ジャブ”で挑発した。

前回大会は年末の仕事が忙しい中、仲間のサポートもあり、休日出勤しながら仕事を早めに終わらせ、大みそかの試合に備えたが、1回4分20秒でKO負け。「ただ情けないという気持ちが大きい」と涙を見せるも「楽しくてしょうがなかった。またこんな夢のような時間があればいい」と話していた。

希望がかなうどころか、さらに大きな会場での試合。「会社員が東京ドームで試合をするって面白くないですか」。第1試合から勝負でもトークでも主役を奪う。(つづく)

【松熊洋介】