格闘技イベントRIZIN28大会が13日、東京ドームで行われる。同会場での格闘技は18年ぶり。夢の祭典がいよいよ開幕する。

日刊スポーツでは同大会の見どころを紹介する。第4回はバンタム級トーナメント1回戦、朝倉海(27=トライフォース赤坂)VS渡部修斗(32=ストライプル新百合ヶ丘)。

「日本最強を証明してから挑戦したい」。朝倉の描くシナリオにふさわしい大会がやってきた。「優勝は通過点」。16人の頂点に立てば、おのずと日本最強は証明される。目標は海外挑戦。その扉を開くチャンスでもある。

3月26日の抽選会では、番号を引いた選手から順番に好きな枠に座る方式。2番を引いた朝倉は、残り14人の選択を待たず、1番で先に座っていた渡部の横に座った。「1回戦は誰でも良かったので、すぐ決まる相手にした。誰もマークしていない。誰にでも勝てる」。いつも通りの強気な発言で会場を驚かせた。

17年12月に初参戦してから3年半がたった。これまで10戦出場し、8勝2敗。19年8月の堀口恭司戦では、2冠制覇を成し遂げた王者をわずか1分8秒でKOした。ただ、昨年の大みそか大会では、その堀口に1回2分48秒TKO負け。半年間の充電期間を経て、再スタートを切る。

「(堀口に負けて)自分の評価が下がった。それで海外に挑戦するのは違うと思う」。試合の組み立て、考え方を変えた。特に元K-1王者の魔裟斗とのユーチューブでのコラボでは多くのことを学んだ。堀口との2戦では、それぞれ距離や手の使い方を変えたことを指摘され、指導を受けた。ミット打ちやスパーリングも行い、打撃やローキックの防御の技術が上がったことを褒められた。練習内容もアドバイスをもらったといい「走り込みや縄跳びなどを取り入れた」と明かした。

強くなるために貪欲に学んだ。ボクシングジムに通い、専門のトレーナーを付けた。寝技も含め、各分野のプロフェッショナルの指導を受けた。最強の称号へ「油断することが一番危険。過信せずに徹底的に研究して勝ちたい」。世界に近づくための挑戦が始まる。

対する渡部は、RIZIN2戦目となった3月の大会で田丸に2回4分13秒、マジカルチョークによるタップアウトで涙の勝利をあげた。「試合前の予想は全部自分が負けると書いてあって悔しかった。僕、バンタム級GP出られますよね?」とマイクで訴え、今大会の出場につなげた。

今回はさらにレベルが上の相手との対戦。3月の抽選会で、朝倉がいきなり隣に座ったことに「予想外。本当かなあと。テレビで見ていた選手と試合ができるのは不思議な感覚」と正直な気持ちを語った。「東京ドームは(毎年正月の)ふるさと祭りで行ったくらい」という最高の舞台で最強の相手との対戦。「寝技、組み技、どれも一流。相手がビッグネームだし、アウェー感じ」と控えめだ。レスリング部だった高校時代から格下の相手と対戦する時ですら「どうしよう」と不安を吐露していた。周囲から「余裕でしょ」と背中を押されても、なかなか解消されなかったという。

ただ、覚悟はできている。「これだけ練習やった、毎日生きてきたという誇りはある。腹をくくってやる感じかな」。やってきた練習には自信を持っている。レスリングの基礎をもう1度やり直した。「活路を見いだすのは寝技。でも寝技オンリーではなく、自分の総合格闘技を見せたい」と意気込んだ。父・優一さんは修斗の初代ウエルター級王者。あこがれだった魔裟斗の試合に感動し、父と同じ道に進んだ。「自信を持って臨んだことはない」と話すが、ファイターのDNAを持つ男が、一発逆転の勝利をつかむかもしれない。【松熊洋介】