格闘技イベントRIZIN28大会が13日、東京ドームで行われる。同会場での格闘技は18年ぶり。夢の祭典がいよいよ開幕する。

日刊スポーツでは同大会の見どころを紹介する。第6回は、ライト級タイトルマッチ、トフィック・ムサエフ(31=ORION FIGHT CLUB)VSホベルト・サトシ・ソウザ(31=ボンサイ柔術)。

内戦の続いていた母国・アゼルバイジャンから満を持して参戦する。愛国心の強いムサエフは、軍隊に加入し、国のために戦っていた。昨秋にようやく落ち着き、11月から練習を再開したという。「今回の参加するのは義務であると考えた」と決意を胸に先月25日に来日した。

コロナ禍でできなかった外国人選手の招集をようやく実現したRIZINの榊原CEOも「戦うことに飢えていたと思う。フィジカルもメンタルも万全の状態で試合をしてもらう環境を作った」と最高の戦いを作り上げるためにサポート。一緒に出場するケラモフとともに、それぞれの部屋にトレーニング設備を備え、食事も2人が希望するものをスタッフが調理して与えた。

今年4月、アゼルバイジャン1部ネフチ・バクーで活躍するサッカー元日本代表の本田圭佑の試合を観戦。試合後に食事をしてユニホームをプレゼントしてもらったという。「いい思い出になった。積極的でポジティブな気持ちの強い人だった」と、日本のスターからもパワーをもらった。

「総合格闘技では勝つか負けるか。戦争となれば生きるか死ぬかが大きな違いだと思う」。対戦相手は関係ない。「どんな相手でも受けて立つ。精いっぱい戦って、みんなが興味のある充実した試合をするだけ」。戦場で命をかけ、たくましさを増したムサエフは、リング上でも戦う意志をぶつけ、勝利を手にする。

 

対するのは、総合格闘技(MMA)12戦11勝のソウザ。4KO、一本勝ち7回のほとんどが1回でのフィニッシュという驚異的な強さを誇る。「判定はない。KOか一本で決めるしかない」と豪語する。3月の前回大会でも元パンクラス王者の徳留一樹相手に、いきなり三角絞めを仕掛け、わずか1分44秒で仕留めた。今回は強敵ムサエフとの対戦。「すごく緊張している。強くて、危険な相手」と警戒しながらも「チャンスがあればグラウンドでいきたい」と得意の寝技で一気に決着をつける。

ボンサイ柔術の生みの親である父アジウソンさんの教えを受け継いだ。07年に来日し、工場で働きながら2人の兄とジムに通った。ブラジリアン柔術の世界選手権では3度の優勝を誇る。13年MMA転向後は打撃も強化。デビューから北岡悟、広田瑞人とグラウンドパンチで沈めた。

柔術の指導も行っているソウザ。会見では必ず応援してくれる仲間や、教え子たちへの感謝を口にする。特に今回、メインで朝倉未来と戦うクレベル・コイケとは来日以来、一緒に技術を身に付けてきた。「自分が勝てば、クレベルも勝ってくれる。勝ってセコンドに付きたい」と語った。

「東京ドームで試合ができてうれしい。大きな大会で緊張もあるが、みんなにいい試合を見せたい」。日本で得た多くの仲間の声援にリング上で応え、念願のベルトを手にする。【松熊洋介】