1月4日の新日本プロレスの東京ドーム大会で、オカダ・カズチカ(34)はIWGP世界ヘビー級王座戴冠を狙う。王者鷹木信悟が待つメインイベントのリングへ、平常心で向かう。

レインメーカーはいつもクールだ。モチベーションを保つ秘訣(ひけつ)を尋ねると、「保とうとする必要はまったくない」ときっぱり。「僕たちはリングに上がることが仕事。会社から『いらないよ』って言われるまでは戦っていくしかない」と、断言する。もちろん、生半可な気持ちで戦っているわけではない。お客さんを盛り上げるのはプロとして当然のこと。そんな高い意識が、若手の時からしみついている。

昨秋のG1クライマックス戦線では、他を寄せ付けない活躍で7年ぶり3度目の優勝を果たした。長期間の開催で、日本各地を巡業する新日本プロレスのリーグ戦。高いパフォーマンスを発揮するうえで何よりも大切なことは、メンタルの維持だという。オカダは、他の選手の試合は一切見ない。次の試合の対戦相手も確認しない。「見たら息があがっちゃう」と、自身のその日のリングだけに集中する。

ストレスを抱えないのが何よりの対策。同世代の選手が食事制限を徹底する中で、オカダは好きなものを好きなだけ食べる。「『ラーメンを食べたら明日動けないかも?』というもやもやを抱えることが嫌。それなら我慢しないで食べて、とにかく気分良く試合に臨めるように心がけている」。また、初めてIWGPヘビー級王者になった12年から、ビッグマッチの前には必ず「吉野家の牛丼大盛り」を食べると決めている。理由は「決めていれば選ばなくてもよくて楽だから」。我慢や悩みは天敵だ。

応援の声もオカダのパワーだ。昨年の4月には、五輪の聖火ランナーとして地元の愛知県安城市を走った。中学卒業後は地元を離れ、単身でメキシコへプロレス修業に渡り、「ちょっと普通じゃない生き方」をした。「それでも新日本プロレスに入って、チャンピオンになって、こういう生き方も認められるんだなって。自分が生まれ育った場所から認められて、間違っていなかったと思えた」と振り返った。

22年は鷹木とのタイトルマッチで幕を開ける。昨年は2敗と苦しめられた相手だが、「前回とは違った戦いになる」と断言する。「彼は21年のMVPですけど、僕たちが戦うのは22年。バトンをいただきますよ」。50周年もタイトルマッチも関係ない。いつも通りのオカダが、いつも通りのクールな表情で言い切った。【勝部晃多】