ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)が「兄貴」と慕うWBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(36=帝拳)とIBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)との2団体統一戦を会場で見届けた。

Amazonプライム・ビデオのライブ配信で「村田応援ゲスト」として来場。史上最大規模興行となったビッグマッチに熱視線を送り、日刊スポーツに観戦記を寄せた。

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今日の試合で、村田さんの覚悟を見ました。打っても打ち返すので、ゴロフキン選手も、村田さんの打たれ強さにびっくりした表情もありました。前半、村田さんの右ボディーが良い感じできていましたが、終盤からそのボディーが…。出なくなったのか、出せなかったのか。続けていたら、もっと展開は変わっていたのかなと思います。ボディー攻撃は重要な作戦だったと想像できるので、それに尽きると思います。

村田さんも大きいですが、ゴロフキン選手の体も非常に大きく、なめてはきていないなと感じました。強弱をつける多彩なパンチを出すゴロフキン選手に、村田さんも回を追うごとに対応しきれなくなっていたようにみえました。ただし、村田さんに2年4カ月のブランクは一切感じなかったので、まだまだやれると思います。この試合で十分にパワーをもらいました。このスーパーファイトを見ることができて、良かったです。

村田さんと初めて出会ったのは自分が高校2年の時でした。先に村田さんから話しかけてくれました。本格的に話すようになったのは、高校3年の夏ごろからです。年齢は少し離れていますが、ナショナルチーム(日本代表候補)合宿などで、自分から話しかけることもありましたし、本当に気さくで、かわいがってもらっていました。(07年世界選手権銅メダルの)川内(将嗣)さんと村田さんがリーダーシップを取っていて、自分にとって本当にお兄さん的な存在でした。

特に記憶に残っている村田さんとの思い出があります。ロンドン五輪予選も兼ねていた11年の世界選手権3回戦で、自分はキューバ選手(ベイティア)と試合をしました。試合終了直後は自分も勝ったと思える内容でした。五輪出場権の懸かった大事な試合でしたが、結果は判定負けでした。落ち込んで宿泊先に戻ると、村田さんに「(井上の)試合が終わった時に『よっしゃ勝った』と思った」と声をかけられたこと。今でも良く覚えています。

あの言葉で(五輪は)手の届かないところではない、紙一重の世界なんだと感じましたし、今でも印象に残っています。自分は18歳で五輪ではなくプロの道を選択しましたが、村田さんは五輪で金メダルを獲得し、プロでも世界王者になりました。本当に簡単なことではないと思います。村田さんはプロとアマを通じて、日本人離れしたパワーで勝ち抜いてきたという印象です。今でも、フィジカルはミドル級で世界トップクラスだと思っています。

2カ月後に、自分も同じ会場で王座統一戦を控えています。19年11月のドネア戦の会場ですが、あの時は集中していて、会場や試合の盛り上がりが分からなかった。今回、異様な熱気、雰囲気に包まれるさいたまスーパーアリーナを疑似体験することもできました。村田さんの“気持ち”を受け継いで、2カ月後のドネア戦に向けて準備していきたいと思っています。(WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者)

▼井上は10日が29歳の誕生日。「“まだ”29歳だと思っています。まだまだ29歳だと思ってやります」と決意も新た。6日には14年の世界初奪取(WBC世界ライトフライ級王座)から8年が経過。「モチベーションの維持に苦戦しながらやってきた8年間でした」とも口にした。年内のスーパーバンタム級転向については「バンタム級でずっとやっていればいいのに階級を上げるのは自分自身のチャレンジ。楽しみです」と、展望も明かした。