WBO世界バンタム級王者ジョンリール・カシメロ(32=フィリピン)の失態で2度も王座挑戦を逃した同級1位ポール・バトラー(33=英国)が同級暫定王座を獲得した。

カシメロの代役として興行主プロベラムがスタンバイしていた同級4位ジョナス・スルタン(30=フィリピン)との暫定王座決定戦に3-0(116-112、117-111、118-110)の判定勝ちを収めた。

足を使ってリングを動き回り、カウンターパンチを打ち込んでスルタンの動きを鈍らせた。「ゲームプランを立てるのに48時間だったが、その48時間でできること。今夜の勝因は私が足を動かし、彼をいなし、体力を浪費させたことだった」。暫定王座ながら新しいWBOベルトを両手で掲げて喜んだ。

サウナ使用による医療ガイドライン違反で、英国ボクシング管理委員会から試合出場不可とされたカシメロへの挑戦は、昨年12月に続いて中止となった。前回はカシメロの胃腸炎による計量直前の緊急入院、そして今回は医療ガイドライン違反と王者側の不手際でWBO世界バンタム級王座挑戦を逃してきた。バトラーは「ドバイでも、今夜もカシメロ戦はできなかった。しかしスルタンとの対決を待っていた。彼は(17年9月に)カシメロに勝っているので、よりよい敵だった」と勝利に満足げだった。

カシメロに信頼を置いていない興行主のプロベラム社は昨年12月、カシメロの辞退を想定し、元IBF世界同級王者ジョセフ・アグベコ(ガーナ)を用意していたがバトラーがカシメロの王座剥奪を主張し、暫定王座戦を拒んだ経緯がある。今回は試合8週間前からカシメロ辞退の場合にスルタンと対戦するという説明を受けていたという。米老舗専門誌ザ・リングによると、バトラーは「もともと8週間前にスルタンが準備できていることを知っていたのでスルタン対策はできていた」とコメント。準備は万全だったようだ。

まだ王座剥奪されていないカシメロは今回のガイドライン違反の原因をWBOに示す必要があった。カシメロの処遇に関してはWBO世界選手権委員会で検討されるが、バトラーは暫定王者から正規王者への昇格を期待している。WBO王者の動向は4団体統一に期待がかかるWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(大橋)にとって気になるところだ。なお井上は6月7日、さいたまスーパーアリーナでWBC世界同級王者ノニト・ドネア(フィリピン)との3団体王座統一戦を控えている。