元プロレスラーで参議院議員も務めたアントニオ猪木さんが1日午前7時40分、都内の自宅で心不全のため亡くなった。79歳だった。力道山にスカウトされ1960年(昭35)に日本プロレスでジャイアント馬場さん(故人)とともにデビュー。72年に新日本プロレスを旗揚げし、プロボクシング世界ヘビー級王者ムハマド・アリ(米国)との異種格闘技戦など数々の名勝負を繰り広げた。89年には参院選で初当選した。近年は腰の手術に加えて心臓の難病「全身性アミロイドーシス」も患い、入退院を繰り返していた。

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アントニオ猪木さんは講演会やイベントなどで、ファンに請われると強烈な右の張り手で顔面をビンタした。今では魂を注入する「闘魂注入ビンタ」としてすっかり定着。約30年にわたり、多くのファンに強烈な右の張り手で魂を注入してきた。

始まったのは90年5月。早稲田予備校での講演会で、猪木さんのファンだったある生徒に「腹を殴らせてください」とお願いされ、ファンサービス旺盛な猪木さんは快く承諾したが、不意打ちで予想外に強烈な一撃に、痛くてとっさに右手の張り手を返してしまった。ビンタを受けた生徒は「ありがとうございました」と一礼。その後殴られた生徒が合格するということもあり、「縁起がいい」とオファーする人が増えた。

猪木さんもファンサービスの一環として「闘魂注入ビンタ」を続けるようになった。ビンタを受けた人には野村沙知代さんや、清原和博さんら有名人も多かった。指導者の体罰が問題になったときも猪木さんは「ビンタして喜んでもらえるのはオレだけ」と笑っていた。