世界中を席巻した「悪の化身」が、魔界へ去る時がきた。2月の東京ドーム大会で現役引退する武藤敬司(60=プロレスリング・ノア)が代理人を務めるグレート・ムタが22日、横浜アリーナで現役最後のリングに上がる。

89年に米国で開いた魔界の門は、34年後の春に横浜で閉じることとなった。90年9月に首都圏初登場した舞台。代理人の武藤が「やっぱりムタの印象は横浜」と話すなど、思い出の地だ。メインの6人タッグマッチに出場。隣には、かつてWCWで抗争を繰り広げた最大のライバルにして盟友のスティング(63)と、AEWのスター、ダービー・アリン(30)。最狂の夜で、有終の美を飾る。

唯一無二の物語を紡いできた。90年に日本初登場を果たすと92年に新日本のIWGP、02年に全日本の3冠を獲得。傍若無人な振る舞いや毒霧攻撃、試合ごとに変化するコスチュームなどで絶大な人気を博した。

昨年6月の引退表明後も新日本やAEWなどにも精力的に登場。今年元日にはWWEの中邑真輔と夢マッチを行った。かつてダース・ベイダーやジェイソンなど、自身を取り巻く全てを憑依(ひょうい)させてきたムタ。最後の作品は、何色に染め上げるか。【勝部晃多】