ボクシングのIBF世界ライトフライ級次期挑戦者決定戦にTKO勝ちした前WBC同級王者でIBF同級8位矢吹正道(30=緑)が試合から一夜明けた29日、同級で世界王座奪回後のフライ級転向を明言した。

矢吹は28日に名古屋国際会議場で行われた一戦で同7位ロナルド・チャコン(31=ベネズエラ)から3度のダウンを奪い、11回2分35秒TKO勝ちした。激闘の代償は両拳。「打ちにいったら向こうが頭を下げてくる」と固い頭部を打ち続けた結果、両拳を痛めた。週明けにも病院で診察を受ける。「かなり腫れてる。折れていたりひびだったら時間がかかる。指は動くので折れていないとは思いますが」。過去にも拳を痛めた経験があり、厳しい事態も想定しつつ「3、4日したら動く。太るんで」と早期の再始動を明言した。

拳の不安はあるが、世界王座奪回への視界は開けた。今後は不透明だが、王者シベナティ・ノンティンガ(24=南アフリカ)への挑戦権を獲得した形。緑ジムの松尾敏郎会長(75)は「(王者は)2月にも防衛戦を予定しているらしい。向こうの動向を見ながら。今度は私が頑張らないといけない」と世界戦実現への意欲を示していた。

矢吹は「この階級でベルトをとりたい」と意欲を示す一方で「その後はすぐにでもフライ級に上げたい」と明かした。今回も、冬場の厳しい環境もあったが、減量に苦しんだという。「本当はこの試合が終わってフライ級に上げるつもりだった。ただ(次期)挑戦者決定戦がついたんで」。世界戦につながる道ができてとどまる決断をした。

ライトフライ級のリミットは48・9キロ、フライ級は50・8キロ。その差の約2キロが「とてつもなく大きい」と矢吹は言う。「ライトフライ級にこだわりはない。ただ、チャンピオンになるために頑張る」。まずは拳の治療を優先し、世界戦実現の朗報を待つ。【実藤健一】