無敗の格闘家で東洋太平洋スーパーバンタム級6位の那須川天心(25=帝拳)が、ボクシング初KO勝利を挙げ、世界ランキング入りを確実にした。

WBA、WBO世界バンタム級14位ルイス・ロブレス(25=メキシコ)との54・8キロ契約体重8回戦に臨み、右足首を痛めた相手の棄権で3回終了TKO勝利。右ジャブをはじめ、上下に打ち分ける左ストレートなどテクニックを存分にみせて圧倒し、格闘家時代から数え、プロ公式戦50連勝を飾った。

   ◇   ◇   ◇

高速ジャブ、そして力強い左ストレートが那須川の両拳からさく裂した。次々とジャブを当て、好機には左強打を上下に打ち分けた。接近戦では強烈な左ボディーアッパーをねじ込み、世界ランカーも後退。4回開始前、ロブレスから右足首痛で棄権の申し出があり、3回終了TKO撃破となった。「まじか!?」を連発しつつ、突然の幕切れを受け入れ「しゃあKO! 足を痛めて、キックの試合みたい」と喜びを表現した。

格闘家時代に3KO勝ちしている得意の関西で、プロ公式戦50連勝を飾った。昨年11月のWBCランキングでスーパーバンタム級39位に入ったが、これで世界挑戦可能な同15位以内入りも濃厚。「全局面ですべて勝ったので、相手の心も折れたと思う。『ロマチェンコ勝ち』です」。「ハイテク」と言われ、精密機械のような技術で相手をレフェリーストップに追い込む元3団体統一ライト級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)の名を挙げ、自らの勝利を表現した。

昨年1月に帝拳ジムからボクシングデビューすると表明してから1年が経過。所属ジムの本田明彦会長から「人より3~5倍、早く吸収しないといけない」と言われ続ける。同9月のメキシコ・バンタム級王者グスマン戦で左拳を骨折すると、3週間後のジムワーク復帰から毎日2時間のシャドーボクシングを継続し「空想の相手と戦ってきた。シャドーも試合の延長線だと思う」と強調。リング内外でオーラ、派手さはある一方で、地味なメニューも愚直に取り組んできた。

本田会長は年3~4試合ペースで試合を組み「25年末には世界戦になる」と、10戦目前後の世界挑戦を見据える。今回の契約体重はスーパーバンタム級以下のウエート。那須川は「バンタム級でいけると実感している。日本のバンタム級は、たくさん強い選手がいると思うが、しっかりと世界を狙う」と宣言。日本王座、東洋太平洋王座への挑戦にも興味を示した。

世界王者への「3年計画」の2年目となる24年は上々の船出となった。「TKOということでとりあえずKO。今度は『T』を抜きたい。(KOする)詐欺撲滅です。ダメージないので、すぐに(試合を)やりたい」。ボクシング初KO勝利で、世界へのロードマップを順調に進んでいることを証明してみせた。【藤中栄二】

◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年(平10)8月18日、千葉・松戸市生まれ。5歳で空手を始め、小学5年でジュニア世界大会優勝し、キックボクシングに転向。14年7月、15歳でプロデビュー。15年5月にプロ6戦目で史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得。16年からRIZINなどにも参戦。18年6月に階級を上げ、初代RISE世界フェザー級王者に。22年6月、K-1の元3階級制覇王者の武尊を判定で下した。23年1月に帝拳ジムからのボクシングデビューを表明。同4月に6回判定勝ちで転向1戦目を飾った。家族は両親、妹2人、弟。身長165センチの左ボクサーファイター。

<那須川天心(なすかわ・てんしん)>

◆名前の由来 父弘幸さんが「天に心を持て」と命名。天のような大きな心を持ち、感謝の気持ちを持ってほしいと願いが込められている。

◆スポーツ歴 父弘幸さんが元サッカー選手で中学時代に全国制覇の経歴を持つため、最初はサッカーを習うもGK。5歳で極真空手を開始。小学5年でジュニア世界大会優勝。その後、キックに転向。

◆キック&総合格闘技 14年7月、15歳でプロデビュー。15年5月にプロ6戦目の16歳でRISEバンタム級王座を獲得。16年からRIZINなどにも参戦し、総合格闘技にも挑戦。18年6月、初代RISE世界フェザー級王者に。22年6月、K-1の元3階級制覇王者武尊に判定勝ち。

◆家族、スタイル 両親、妹2人、弟。身長165センチの左ボクサーファイター。体重は61キロ(通常)。

那須川天心、初のTKO勝ちでボクシング転向後3連勝 相手のロブレス負傷棄権/ライブ詳細