挑戦者の同級10位・井上彪(たける、25=六島)がプロ5戦目で初黒星を喫し、王座奪取に失敗した。

同級王者ジェイソン・バイソン(25=フィリピン)に挑むが、立ち上がりに強打を食らい、劣勢に立たされた。「最初がうまくいかなかった。めっちゃ効いた。(王者は身長157センチで)低さより、飛び込むスピードとパンチがあった。自分の組み立てができなかった」。下唇は血で染まり、腫れた顔で悔しい敗戦を振り返った。

中盤からばん回した。左ボディーをあきらかに嫌がっていた王者だが、倒しきれなかった。「要所のごまかしを含めて、やりがたいものがあった。これがキャリアの差か。うまいことやられた」。最終10回にも一時はダウン判定(最終的にはスリップ)。ジャッジは93-97、94-96×2と3人とも王者を指示。結果的に序盤のマイナスを取り戻せなかった。

井上は宮崎・日章学園高時代に2冠を獲得し、近大に進んだアマエリートだが、卒業後の進路は「親を安心させたい」と公務員の道を選び、大阪府警に入った。しかし、世界王者への夢をあきらめられず、飛び込んだプロの世界で初の屈辱を味わった。「まだベルトを巻く実力はなかったということです」。

苦い経験は今後に生かすしかない。「通用した部分もあれば、攻め急いでしまった部分もある。想定外のことが起きてもパニクらない。いい経験をさせてもらった」。世界へと羽ばたくための重要な一戦となった。【実藤健一】