新日本の天山広吉(38)が引退危機に追い込まれた。新日本は14日、天山が頸椎(けいつい)部の脊椎(せきつい)管狭窄(きょうさく)症と右肩亜脱臼により、15日の東京・両国国技館大会から無期限で欠場することを発表した。天山は昨年12月に右目の網膜剥離(はくり)手術を受け、約5カ月間離脱。今年5月に復帰も6月シリーズで古傷の頸椎を傷め、7日開幕のG1クライマックス(G1)連戦で悪化。今後、手術も検討しながら治療を行うが、回復具合によっては引退の可能性も出てきた。

 新日本第三世代の旗手として、団体をけん引してきた天山が大ピンチだ。この日、都内の病院で約1時間のはり治療を受けた天山は「今回はだいぶ深刻。できる限り治して試合がしたいが…」と言葉を濁した。三沢威(たけし)トレーナーも「右肩周辺の筋肉がマヒして、力が入らない状態。復帰は未定で長期欠場は避けられない。引退もあり得る」と話した。

 右目網膜剥離手術から5月3日の福岡大会で復帰。同6日にはノア日本武道館大会に参戦し、タッグマッチで小橋建太と対戦するなど、順調な回復ぶりをアピールしていた。だが、6月シリーズから古傷の首に違和感を覚え、3年ぶり4度目の優勝を目指したG1(7日開幕)出場が裏目に出た。

 開幕2戦目(8日)の飯塚高史戦で、試合後にパイルドライバーを浴びて右肩亜脱臼。その後も、強豪との連戦による疲労と、試合後の飯塚の執拗(しつよう)な乱入による攻撃で、負傷個所を悪化させた。「欠場はしない」という本人の意思でG1は2勝4敗と予選リーグを完走したが、代償は大きかった。

 天山は過去、新日本の数々のタイトルを獲得。シングルだけでなく、蝶野正洋と組んだ「蝶・天」タッグ。小島聡と組んだ「テンコジ」タッグなど、ファンの記憶に残る試合を提供してきた。今夏のG1での苦闘ぶりはファンの胸を打ち、新日本事務所にはG1開幕後、「飯塚は天山を殺す気か」など、体調を気遣う電話が殺到したという。

 天山は今後、手術も検討しながら回復に努める。ただ、6月13日のノア広島大会で、三沢光晴さん(享年46)が頸髄(けいずい)離断で亡くなる事故があったばかり。新日本の菅林直樹社長は「これ以上無理はさせられない。非常に心配している。完治しなければ出場許可は出せない」と深刻そうに話していた。