新関脇の照ノ富士(23=伊勢ケ浜)が12勝目を挙げた。西前頭筆頭の逸ノ城(21)相手にがっぷり四つから、先場所に続く水入りになる3分53秒の熱戦の末、寄り切った。負ければ白鵬の優勝が決まる状況で2敗を守り、賜杯の行方は千秋楽まで持ち越しになった。照ノ富士が唯一逆転優勝の可能性を残し、千秋楽で豪栄道に挑む。

 モンゴルの怪物同士の激突は、またしても大相撲となった。照ノ富士は立ち合いで右を差して攻めに転じたが、体重200キロの逸ノ城は動かない。「止まると長くなる。止まらないでと思っていたけど、動かない」。がっぷり四つになったが、3度腰を振って上手を切り、頭をつけて攻防を繰り返した。3分30秒で水入りが入ると「またかよ…」。水を飲み、目をギュッとつむった。

 がっぷり四つの状態で1分48秒後に再開すると、一気に動いた。逸ノ城の攻めに乗じて再び上手を切り、上手投げを放ちながら寄り切り。前回は4分46秒。約1分短いが、異例とも言える同一カードで2場所連続の水入りに「嫌だな。がっぷり組んだら、なるだろうな。もう疲れた」。支度部屋でも、いつものちゃめっけたっぷりな発言は控えめだった。

 逸ノ城とはともに将来の横綱候補と称され、今場所から締め込みを黒に変えるほど親しい。だが何かと比較されることには「周りが言うだけで、そんなに気にしない」と言う。一方、大関昇進には「誰が先に上がるか」とライバル視し、2学年先輩の意地を見せた。

 これまで優勝争いについては濁してきたが「うれしいですよ」と初めて口にした。右87、左89キロの握力も、前日の白鵬戦に続く熱戦に「にぎれない。もうどっちも(握力)ないよ」と、疲労はピーク状態だ。逆転優勝には、千秋楽の豪栄道戦での勝利が絶対条件。あと1番。白鵬は兄弟子の日馬富士に託し、土俵に集中する。【桑原亮】

 ◆先場所の水入り 15年初場所14日目、西関脇で5勝8敗の逸ノ城と、東前頭2枚目で7勝6敗の照ノ富士が対戦。右四つがっぷりの体勢から3分20秒で、5年8カ月ぶりの水入り。再開し結局、4分46秒8を要した一番は、5度目の寄りで逸ノ城が制した。幕内では2場所連続となったこの日が、平成で15回目の水入り。なお再開後の2度目の水入りとなった場合は、基本的に2番後に取り直す。それでも水が入った時は引き分け。55年初、春場所で若ノ花-出羽錦が2場所連続引き分けを記録している。日本相撲協会によれば、記録に残る80年初場所14日目の若乃花-北の湖の横綱対決以降で、2場所連続同一対決での水入りはない。